アクションゲームにおける『スーパーマリオブラザーズ』の功績はわざわざ述べるまでもない。同様に、『ウルティマ』や『ウィザードリィ』がなければ、ロールプレイングというジャンルそのものが生まれていなかっただろう。今回取り上げる『ストリートファイターII』も、ゲームの歴史を語る上で外せない作品の1つだ。
1991年にAC版が登場した本作は、いわゆる格ゲー(格闘ゲーム)の先駆け的存在である。じわじわ稼動を伸ばしたのか、それとも登場後すぐに火がついたのか、今となってはもう思い出せないのだが、あの頃の熱狂ぶりはとにかく凄まじかったの一言で、ストII以後の格ゲーブームとは完全に異質なものであったように思う。
筆者の通っていたゲーセンでは、筐体の隅っこに100円玉が山積みになっており、要するにこれは“順番待ちの硬貨”なのである。普通このような状態ならば誰かが勝手に使ってしまう、場合によってはそれを奪って逃走してしまうことも十分あり得たと思うのだが、そういったトラブルは一切聞いたことがない。また、乱入対戦が主流となった『ダッシュ』や『ターボ』で対戦者同士がリアルファイトに発展…なんていうのもなし。ごく稀に恐喝事件が発生することはあったにせよ、ゲーセン=不良の巣窟というのは偏見に過ぎない。筆者にとっては同じゲームに熱中する人々が集まる、居心地の良い空間だったのである。
<SFC版はいずれも大ヒットを記録>
AC版の大ヒットの翌年。念願であった家庭用(SFC)への移植がついに実現する。容量の関係で削られた要素も多かったものの、それは音声やグラフィックなど、ゲームの進行に直接的な影響を及ぼさないものが大半であり、プレイ感はAC版そのもの。連日ゲーセンに通いつめていた猛者はもちろん即購入、SFC版でデビューという方も多かったのではないだろうか。
ちなみにSFC版は初代が約290万本、ダッシュとターボの要素を追加した続編も約210万本の売り上げを記録。人気ジャンルのRPGでもダブルミリオンを達成するのは並大抵のことではないのだが、それをプレイ人口がRPGよりも遥かに少ない格闘ゲームで達成したのだから、奇跡といっても過言ではないだろう。
その後、格ゲーブームは『バーチャファイター』に代表される3D作品が登場したことでさらに熱気を帯びていく。一方、2D格闘もカプコンが『ヴァンパイア』等の派生作品を次々投入。他メーカーからも続々と2D格闘がリリースされ、それなりに人気を博したものの、完成度の面ではカプコン作品に遠く及ばなかった(当時)。唯一の対抗馬は『餓狼伝説』『サムライスピリッツ』で知られるSNKくらいのものだろう。
格闘ゲームは2D、3Dともに僅か数年で急速に進化した。しかしその反面、操作が煩雑になりすぎる等の弊害が生じてしまう。筆者を含め、普通レベルのプレーヤーがこういった劇的な変化についていくことはまず不可能だ。かくして格ゲーブームは終わりを告げたのだが、ドット単位もしくはフレーム単位の攻防を繰り広げてきた上級者たちは、「俺より強いヤツに会いに行く」というSFC版ストIIのキャッチフレーズを心のスローガンに、今なお修行に励んでいるのである。(文=内田@ゲイム脳)
(C)CAPCOM 1991,1992
DATA
発売日…1992年6月10日
メーカー…カプコン
ジャンル…格闘ACT
ハード…スーパーファミコン