今大会の前売りチケット(一般)は、「中央特別指定席」が2800円、「1・3塁特別自由席」が2000円という値段設定がされている。しかし、オークションサイトやフリマサイトを見ると、前売り・当日に関係なくほとんどの席種が定価の数倍以上で出品されており、中には10倍以上の値段で取引されているものも見受けられた。
履正社、星稜の両校にとって集大成となる大一番が、金儲けのダシに使われているという現状。ネット上の高校野球ファンからは、「本当に観戦したいファンの気持ちを考えろ」、「こいつらのせいでチケット買えなかったと考えると本当に腹が立つ」、「転売する奴はもちろん、それを買う奴も同罪」といった批判が殺到している。
一方、中には大会を主催する日本高校野球連盟(高野連)に向けた「十分な対策とらない高野連にも腹が立つ」、「チケットに注意文追加するぐらいできないのか」といった怒りのコメントも。責任の一端が、高野連にもあると考えているファンも一定数存在することが浮き彫りとなっている。
チケット転売問題に関しては、昨年12月に「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(チケット不正転売禁止法)が成立し、今年6月14日から施行。これにより、転売禁止の旨や購入者の氏名といった情報が記載されているチケット(特定興行入場券)であれば、転売行為を法律で取り締まることが可能となっている。
法律の成立・施行を受け、具体的な対策に乗り出したスポーツ団体もある。例えば、プロ野球・DeNAは今年2月に「チケットの不正転売および、転売目的購入の禁止について」というタイトルの文章を公式サイトに掲載し、本人確認や2次流通マーケットの設置といった対策を強化することを表明。
その後の報道によると、現地では開幕後から係員が身分証・チケットの照合を抜き打ちで行っており、この結果不正が認められた場合は該当者にファンクラブ退会や以後のチケット購入禁止といったペナルティを下す。さらに、これと並行してネット上における転売品の出品状況にも目を光らせているという。
また、サッカーJ1・川崎フロンターレも転売対策の一環として、今年9月から「シーズンチケット」を電子化。これを皮切りに、来年は通常チケットでも電子化を順次進めていく予定となっている。
一方、高野連は公式サイト上には「営利目的の入場券の転売は、固く禁止しています」という注意文を記載しているものの、肝心のチケットにはその旨を明記していない。そのため、今現在転売されている決勝のチケットは、その全てが法律の保護対象から外れてしまっているというのが現状だ。
始発の電車に乗っても、チケットを入手できないといわれる昨今の甲子園大会。それでも足を運んでくれるファンのために、高野連には迅速な対策が求められているといえそうだ。
文 / 柴田雅人