フェラーリピサが東京ダ1400メートルのレコードホルダー(1分21秒9)の意地とプライドを見せつけた。
直線半ばすぎ。しぶとく粘るセントラルコーストをねじ伏せたのもつかの間、今度は外からヒシカツリーダーが襲いかかる。だが、鞍上・岩田騎手の叱咤にこたえて気力を振り絞り、最後まで他馬を抜かせることなくゴール板へ飛び込んだ。クビ差の辛勝。しかし、満身創痍(い)の状態で臨んだ一戦だっただけに、この一勝には大きな意味がある。
前走のエルムSを快勝して間もなく、右顔面の神経痛にかかった。「ストレス性のものだと思う。右目が開きっぱなしになり、カイバもボロボロと桶にこぼしていた。体は減るし、筋肉は落ちるしで、立て直すのが大変だった」と白井調教師。厩務員ほかスタッフの献身的な看病で何とか復帰のメドを立てたものの、まだ完治したとはいえないままでの出走だった。
それでいながら、自身のもつレコードタイムにコンマ2秒差まで迫る好時計勝ち。「今日はゲートが決まって道中、楽にいけた。手応えも良かったし、直線半ばまで我慢して追い出すとスッと抜け出てくれた。次(フェブラリーS)も出られればうれしいです」と岩田騎手は笑みを浮かべた。
一方の白井師も笑顔を隠せない。「正直、半信半疑だった。それでも(1週前とは異なり)最終追いがまずまずだったし、この距離のレコードホルダー。馬場も湿っていたからね。本当にうまいこと、よみがえってくれた」。次走については「これだけ走れれば、それなりに自信をもってフェブラリーSへ出せる。相手はかなり強いんだけどね」。控えめな言葉とは裏腹に、その表情には自信がみなぎっていた。
長い闘病から奇跡的に戦列へ復帰し、目下GI3連勝と完全復活を遂げたカネヒキリ、そして昨年の覇者ヴァーミリアン。ここへ前哨戦を制したフェラーリピサが加わるフェブラリーS。日本では競馬が誕生して以来、“ダートは芝より格下”と見られているが、今年の砂戦線はこれまでにないほど熱くなりそうだ。