これまで、JBCは老舗のWBA(世界ボクシング協会)とWBC(世界ボクシング評議会)しか認可していなかった。しかし、世界的にWBO、IBFが広がりを見せるなかで、その流れに乗ることになる。
今まで、JBCが後発2団体を認可していなかったため、両団体の王座に挑戦する場合には、JBCからの脱退、除名を余儀なくされるケースも多かった。
10年4月30日、WBC世界バンタム級王者(当時)の長谷川穂積が、WBO世界同級王者のフェルナンド・モンティエルと東京で事実上の統一戦を行ったが、JBCは統一戦としては認めなかった。
また、元WBA世界スーパーウエルター級暫定王者の石田順裕は昨年5月、ロシアでWBO世界ミドル級王座に挑戦するために、JBCに引退届を提出している。石田は3月30日、モナコでWBA世界同級王座に挑む予定で、JBCにライセンス再発給を希望している。
石田のようにWBO、IBFに関わった選手は苦汁を味わってきたのが現実で、チャンスが広がるのはいいことだろう。
だが、JBCが認可する団体が2から4に倍増することで、懸念されるのが世界王者の乱立。現状においても、WBAが世界戦の承認料を稼ぐために、正規王者がちゃんと存在するにも関わらず、暫定王者を乱造。さらに、多くのスーパー王者をつくるなど、世界王者の乱立が目立っている。
この上、WBOとIBFの世界戦を認可することで、世界戦の機会は激増し、単純に世界王者の数は倍増する。これは安易な世界王座への挑戦、実力の伴わない世界王者の誕生にも、つながりかねない。
JBCでは国内での挑戦は「世界、東洋太平洋、日本のいずれかの王座獲得経験者に限定する」とハードルを設け、安易な挑戦を防ごうとしているが、海外に行けば、そのルールは適用されない。年内にも3兄弟世界王者を目指す亀田3兄弟の三男・和毅は内規を満たしていないが、亀田陣営は「日本でやらなければ、いつでもできる」と意に介さず。この規定も海外に出れば、治外法権となり、有名無実となりそうだ。
世界的な流れに逆らえない現実は理解できる。しかし、容易にはなれないのが世界王者で、だからこそベルトの価値もあった。世界戦の機会が著しく増えて世界王者が乱立すれば、その権威が守れるのか、はなはだ疑問だ。
(落合一郎)