制度の目的は社会保障(年金や雇用保険、生活保護など)と税、災害対策の3分野にわたり、徴税と社会保障関連を一元化することで、行政手続きを簡素化し利便性を高めることにある。さらには2018年以降、まだ流動的だが、医療分野への拡大や銀行口座とのヒモ付けなども行われる予定。将来、不動産登記や自動車登録、住宅ローンなど、カネが動くあらゆるジャンルでマイナンバーが使われると予測されている。
それは良しとして「費用対効果」となると途端に疑問が点灯し始める。当初の見積りからして杜撰で、システム完成から運用まで3000億〜5000億円の予算が必要といわれていたのが、現時点で、すでに'14年度当初予算で約1000億円、'15年度予算は約1180億円も掛かっている。各自治体もどれくらいの予算を要するのか把握しておらず、年間数百億円とされる維持費を含めれば全体像さえつかめない状況。
明らかなのはIT業界、政界、官僚の“カネのトライアングル”が高笑いすることだけだ。実際、厚労省を舞台にマイナンバー制度をめぐる贈収賄事件も起きたが、贈賄側はIT関連会社だった。また、すでにマイナンバーの流出事故や住民票への誤記載、誤配達も起きており、全国の自治体の60%が情報管理に不安と答えているほどだ。
こうした制度の複雑さと国のテキトーぶりに対する「国民の不安、理解不足」から、詐欺グループにとっては実に使いやすい舞台装置となっている。現金を騙し取られる事件が早くも発生しているが、番号が“一生もの”であることが彼らには最大のメリットだ。
「先ごろネット上で確認されたのが『マイナンバー占い』で、かつて流行した携帯電話占いのように、番号で占うと騙して個人情報を盗み出す手口です。狙いは女子高生などの若者で、将来、詐欺に使おうという“先行投資”的な意味合いが強い」(警察関係者)
いずれ預金口座ともヒモ付けされる予定だから、数年後、気付いたときには口座が空っぽなんてことにもなりかねない。民間転用される'18年以降「日本の総個人資産1600兆円が流出するのでは?」と危機感を募らせるのは、特需で沸いているはずの大手IT企業幹部だ。
「アジアの某大国からのハッカー攻撃で、年金情報や東証の会員情報が大量に流出しましたが、年金機構と同じようにマイナンバーのセキュリティーレベルは、メガバンクなどに比べて格段に脆弱です。そんな低レベルのセキリュティーしかないのに、それより高レベルな民間企業と一緒にやろうとする発想自体に無理がある。ですから情報漏洩は絶対に起きると諦めた方がいいでしょう」