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イラクで戦った元日本人アメリカ兵・越前谷儀仁氏インタビュー

 元日本人米兵・越前谷儀仁氏が書き下ろしたイラク戦記本「デビルドッグ」がこのほど並木書房より発売された。「今も続いている『テロとの戦い』とは何なのか。実際にその世界を見てきた自分が書くことは、多少なりとも意味のあることだと思ったんです」という。自著のPRのために来日した著者に、激動の半生を聞いた。
 始めに素朴な疑問。日本人でありながら、なぜ米軍なのか?
 「米海軍の横須賀基地へ見学に行ったとき、海兵隊の兵士たちが礼装を身にまとって行うライフル・ドリル(銃の試技披露)に圧倒されたんです。子どもながらに『これはすごい』と。いつか自分もあんな風になりたいと思うようになりました」
 高校卒業後、著者はステップアップの場として陸上自衛隊に入隊。最精鋭部隊といわれる習志野の第1空挺団に所属したが、アメリカへの想いは強くなる一方だった。その刹那、たまたま応募したグリーンカード(永住権)の抽選に当たったことが、著者の人生を大きく動かすことになる。
 「米軍に入るには、まずグリーンカードを取得することが最低条件。当時は陸自の曹候補士の試験にも合格し、ある意味では身分が保障されていましたが、それらをすべてなげうつ決心をします。自衛隊での勤務も充実していましたが、やっぱり米軍への憧れが勝ったんですね」
 渡米後、著者は旅行会社で働くなどしてしばらくは自活の道を歩むが、9・11の同時多発テロ後、アフガン戦争へ突き進んだアメリカを見定めるように海兵隊へ志願入隊。サンディエゴのマリンコーデポ(海兵隊新兵訓練所)で、“地獄のブーツキャンプ”と呼ばれる過酷な訓練を受けることになる。
 「ブーツキャンプではとにかく何をするにも時間厳守が絶対で、しかもその時間はとても短い。トイレを例にとると、1人1人が済ませる時間なんてないから70人の新兵が一斉に群がり、1つの小便器に数人がかりでおしっこするんです。訓練中に尿意を催しても、教官は絶対にトイレへ行かせてくれない。我慢できなければ垂れ流すしかないんです」
 3か月にわたるブーツキャンプが終わり、一端の海兵隊員として歩き始めていたとき、米政府は諸悪の根源と目していたイラク・フセイン政権の打倒を目指し、ついに開戦へ踏み切る。著者の所属部隊も派遣が決定され、ここで初めての戦場任務に赴く。派遣地は古都・バビロンだった。
 「僕の部隊が派遣されたとき、既にイラク正規軍は壊滅していましたが、各地で残党のゲリラ戦は続いていました。このため、バビロンでは占領地での周辺警備や治安維持にあたり、もちろんテロリストの発見、拘束も重要な任務でした」
 帰還後、イラクではフセインが拘束されたものの、依然として武装勢力との戦闘は続き、戦争の大義名分だった大量破壊兵器も見つかっていなかった。宗教対立に起因する内戦も激化し、状況は泥沼の一途。そんな情勢下で、2回目のイラク派遣が決定される。場所は最激戦の地、ファルージャだった。
 「ファルージャでは護身用として銃の携帯が許可されていたため、見た目では武装勢力と一般市民の区別がつきません。これが非常に任務を難しくしました。街をパトロールしていても、どこから銃撃されるかわかったものじゃないので、僕らも必死でしたよ」
 いつ命を落とすかもしれない戦地での任務。そんなときでも、著者が着用する防弾チョッキの胸ポケットには、常に日本から持参していた日章旗があった。

 「国籍が変わっても、僕はやっぱり日本人なんです。これがあればどんな状況でも任務を全うできる気がしました。たとえイラクで戦死しても“大和魂は生き続けているんだぞ”ってね」
 06年10月、著者は4年間の海兵隊勤務を終え、名誉除隊の道を選ぶ。現在の仕事については多くを語ろうとしないが、これは次のステップに進むための充電期間と見るべきだろう。事実、著者は作中でこう述べている。
 《「人生は一度しかない。生まれ変わったらまた人間でありたいと思うが、そうであるとは限らない。自分の魂がこの世にある限り、自分は何をしたいのかを真剣に考え、行動することが重要だと思っている」》
 では、著者が今後の人生で見据えている目標とは…?
 「そうですねぇ、大学に行って勉強もしたいし、パイロットにもなりたい。また軍に戻ることがあるかもしれません。そうそう、軍では出会いがまったくなかったんで、嫁さん探しもしたいですね(笑)」

●プロフィール
 えちぜんや・よしひと 1973年生まれ、神奈川県出身。自衛隊での勤務を経て、2002年10月アメリカ海兵隊に志願入隊。03年6月、イラク戦争に派遣され、バビロンでイラク軍残党の掃討作戦に従事。05年7月、2回目の派遣で激戦地ファルージャで戦う。帰還後、伍長に昇進し、06年10月に名誉除隊。現在アメリカ陸軍予備役勤務。

●本紹介「デビルドッグ」越前谷儀仁著、並木書房
 世界最強の米軍において、その勇猛さから「デビルドッグ」(悪魔の犬)といわれる海兵隊で戦う日本人がいた。
 9・11同時多発テロ後に入隊、地獄のブーツキャンプ(新兵訓練)を乗り越えた彼を待ち受けていたのは「イラク行き」の命令だった。
 なぜ彼は日本人でありながら米兵になる道を選んだのか、そして2度にわたるイラク派遣で何を考えて戦ってきたのか?
 本書は兵士としての視点から「テロとの戦い」の実相を描く実録戦記。海兵隊に入隊後、2度にわたるイラク戦争への派遣を経て、06年に名誉除隊するまでの日々をつづる。税別1600円。

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