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創作実話を紡ぐ人々(4)

 最近、ネットでは「創作実話」という言葉を毎日のように目にするし、またそれとは知らず、あるいは知ったうえで「創作実話」を読むことも少なくない。創作実話とは、読んで字のごとく、あたかもの実話のように創作されたエピソードで、代表的なものとしては「艦これにハマった元軍人」や「マックの女子高生」などがある。また、広義の創作実話として「実話をもとにしたと称するも、内容はほぼ無関係」とか、あるいは「もとにしたとされる実話が存在しない」創作物などがある。

 たとえば、映画「マニトウ」は北米先住民の悪霊が白人女性の腫瘍に宿って現代へ復活し、電子医療機器の精霊と戦う物語だが、最後に「東京で少年の腫瘍を検査したところ、明らかに胎児であった」という実話をもとにした作品であることが明かされる。医学的には、双子胎児の片方が母親の胎内で成長しなくなり、もう片方へ吸収されてしまう「バニシング・ツイン」という現象もあるのだが、東京でそのような症例が報告され、海外まで伝えられたかどうかとなると、いささかもって怪しいと言わざるをえない。

 いずれにせよ創作実話の起源は古く、たどれば英雄叙事詩や聖人受難譚に至るともされるが、それらは作者や伝承者が「創作であり、実話ではないこと」を意識していたかどうか微妙であり、読者にも特に疑問を持たれていないことを考えると、創作実話の範疇には入れにくいであろう。そのため、創作実話の起源としては19世紀初頭にイギリスで流行した「ペニーブックス」などの大衆向け娯楽雑誌へ掲載された実話、実録読み物がひとつの起点と考えられる。

 ペニーブックスとは、チャップ・ブックとも呼ばれる大衆向けの低価格読み物で、読者が喜ぶなら硬めの信仰奇跡譚からエログロまで、ありとあらゆるテーマを扱ったが、その中でも犯罪実録や拷問、処刑に関する読み物は人気があった。実録と言っても、大半は締め切りに追われつつ書き飛ばしたような記事だが、当時は事実関係を取材するといった概念すらしっかりと整っていなかったので、現代的な実録と同様には評価できない。

 ともあれ、読者の気を惹くキャッチコピーとして実録をうたいつつ、内実は創作もしくは根拠の無い噂という記事が数多く登場すると同時に、反対の創作ではあるものの事実を元にしている読み物も登場したのである。

 そして、その頃に書かれた創作恐怖読み物の「スウィーニー・トッド」もまた、フィクションの体裁を取りつつも実際におきた事件をもとにしていると、ピーター・へイニングというイギリスの作家が主張したのである。

(続く)

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