日本人エースが完全復活を遂げた。
スミスと対峙した吉田は、警戒していたローキックを被弾しながらも間合いを詰め、浴びせ倒すようにしてグラウンドに持ち込み、袈裟固めの態勢に。そのまま全体重をかけて絞め上げ、スミスをタップアウトさせるという完勝劇で見事に復活をアピールした。
その胸中には決意を秘めていた。「自分の中でもこれで落とすようなら続けていてもダメだと、背水の陣の気持ちだった。負ければ次はないと思っていた」と引退が脳裏をかすめるプレッシャーとの戦いでもあった。「打撃で盛り上げて、というのもあるが、極められるところがあれば何でも極めようと思っていた」と勝利を最優先に闘って結果を出し「ホッとした気持ち」と久々に笑顔を弾けさせた。
今後については「自分の中でリセットされた。次はもっといい試合ができるはず」と語り、開催がウワサされるヘビー級トーナメントについては「あれば出たい」。また、3月の旗揚げ戦で完敗を喫したジョシュ・バーネットに「次はああいう闘いにならないと思うので」とリベンジを誓った。
およそ2年ぶりとなる勝利を手にして気持ちも新たに次なる闘いを見据える吉田には、早くも対戦要求が続出だ。この日、藤田和之を左フックから鉄鎚の連打で下したトラビス・ビューが「吉田は日本のヒーロー。金メダリストでもあるし、ぜひ闘う機会を得たい」と言えば、チェ・ムベを腕ひしぎ十字固めで破ったマーシオ・“ペジパーノ”・クルーズも吉田との対戦を訴えていた。さらにグレイシー一族最強の遺伝子を受け継ぐと言われるホジャー・グレイシーとの究極の異種格闘技戦も浮上してきた。
戦極を主催するワールドビクトリーロード(WVR)の國保尊弘広報は、吉田の今後について「我々としては93kg級で、という気持ちもある。ホジャーとは100kg(ヘビー級)で、という話もあるが、93kg(ライトヘビー級)でも」とした上で「道着マッチも面白いのではないか」。戦極サイドでは柔道金メダリストの吉田と、アブダビコンバット無差別級をオール一本勝ちしている柔術界の“金メダリスト”ホジャーと道着を着用しての頂上決戦の実現も計画されている。
ドリームマッチも浮上してきた吉田の今後から目が離せなくなってきた。