隣にいる恵美ちゃんのテーブルから何やら気になる会話が聞こえてきて、おもわず、聞き耳をたててしまう。
「ヴィンテージワインなんだけど、恵美ちゃんの生まれ年のものなんだ」
あらっ、オシャレなプレゼント。ワインを受け取る恵美ちゃんの嬉しそうな顔を、横目でチラッと見ながら、ちょっとうらやましいな〜なんて思ったりもした。
閉店後、恵美ちゃんの元へ駆け寄ってみる。
「ちょっと〜! オシャレなプレゼントいただいてたじゃないの!」
「えっ、オシャレな?」
「ほら、さっきお客様から生まれ年のヴィンテージワインもらってたでしょ?」
「ああ、もらいましたけど…。何か鳥肌たちません? こういうプレゼントって」
「…えっ?」
「いや、何かこういう気取ったプレゼントを女性に贈る自分に酔っているみたいな? そもそも、ワイン苦手なんですよね、私」
そう冷たく言い放ち、着替えの続きを始める恵美ちゃんにそれ以上かける言葉は見つからなかった。
それから数か月後。またもや、隣にいる恵美ちゃんのテーブルから何やら気になる会話が聞こえてきたので、前回と同様、おもわず、聞き耳をたててしまう。
「この間、出張で鹿児島に行ってきたんだけど、良かったらこれ」
「ええ、嘘! これって鹿児島のプレミア焼酎じゃないですか!」
「たまたま見つけたんだけど、前に恵美ちゃんが飲みたいって言ってたのを思い出してさ」
「ありがとうございます! もう、ネットでも入手困難でどうしようかと思ってたんです」
嬉しい〜! と喜びを隠しきれない恵美ちゃんの姿を見て、先日、ワインを贈っていたあのお客様の姿を思い出すと、何だかいたたまれない気持ちになった。
でも、本当にこんなことがあるんです。場合によっては、数万円のワインよりも、数千円の焼酎の方が喜ばれるなんてことがね…。
取材・構成/LISA
アパレル企業での販売・営業、ホステス、パーティーレセプタントを経て、会話術のノウハウをいちから学ぶ。ファッションや恋愛心理に関する連載コラムをはじめ、エッセイや小説、メディア取材など幅広い分野で活動中。
http://ameblo.jp/lisa-ism9281/