最終的には間に合うと思うが、岩村明憲(32)は調整が遅れている。昨季のアスレチックスのユニフォームを来ていたときは生で見ていないが、ヤクルト時代(約5年前)と比べると、身体が重そうだった。松井稼頭央(35)はハイペースで仕上がっていたので、岩村1人の出遅れが致命傷になることもないだろう。
野手でハツラツとした動きを見せていたのは、6年目の西村弥(27)だ。「俊足強肩の内野手」として沖縄尚学時代から(東京情報大卒)知られていたが、二塁も守れる岩村の出遅れ、星野監督が機動力野球を目指していることなど、『追い風』も吹いている。
星野監督の掲げる機動力野球だが、司令塔は本西厚博・外野守備走塁コーチ(48)だろう。2月12日の紅白戦で聖沢、内村が3盗塁を決めたのは既報通り。それが「実戦でも使える」と思わせたのは、全て2球目までに決めたこと。鉄平、中村、牧田も走れるし、二軍には西田哲朗(19)、中川大志(20)など三拍子揃った逸材も控えている。本西コーチはリードの小さい走者をその場で怒っていた。楽天は機動力の攻撃スタイルを確立しつつある。
成績を挙げそうな選手はけっこういたが、チームを牽引してくれそうなキーマンはいない。現時点では、松井稼頭央だろうか。
投手の継投策に泣かされる試合もあるだろう。中日時代に逆上っても、星野監督はクローザーに繋ぐ『方程式』を作るのは得意だが、奇策を用いる指揮官ではない。また、クローザーが控えているのが分かっていても、先発投手が好投すると、交代を躊躇って逆転を許してしまうときもあった。中日時代はそれが若手投手の教育にもなったのだが…。
そんな指揮官の性格と、『絶対的なストッパーが出現しない現状』を考えると、先発投手のノルマは「5〜6回」ではなく、「7回」になりそうだ。
ただ、田中将大(22)は『中5日の先発ローテーション』も務まりそうである。昨季、田中の完投試合数は「8」、エース・岩隈久志(29)は「4」。投球スタイルが違うとはいえ、星野体制で主軸投手になるのは、田中の方だろう。
クローザー候補・金炳賢(32)に対する評価は大きく分かれている。往年の輝きを取り戻しつつあるという声もあれば、「20代のころ、スライダー系の変化球はフリスビーのような曲がり方をしていたのに…」と“ダメ出し”をするプロ野球解説者もいた。対戦チームと一通り当たったら、「今のボールのキレではつかまる」という意味だ。個人的にはルーキーの美馬学(24)が適任だと思うが、青山浩二(27)の『ストレートの威力』を再認識させられた。昨季終盤は中継ぎに定着したが、ストッパーも十分務まる投手である。「実戦で本領を発揮できない、本当はもっと凄いのに…」という意味で、「ブルペンエース」とも呼ばれてきたそうだが、星野監督が喝を入れるべきはこの青山だと思った。
楽天はストレートの速い投手が少ない。小山、川岸、新加入の岡本真或(36)のセットアッパー陣が元気なのは明るい材料だ。金炳賢の復活に時間が掛かるのなら、ストッパーを途中獲得する可能性もある。セットアッパー陣と金炳賢、美馬が状況に応じて9回を締めくくることになりそうだ。(スポーツライター・飯山満)