今年の交流戦はリーグを跨いで移籍してきた選手がキーマンになったようだ。それは、交流戦優勝の福岡ソフトバンクホークス・内川聖一(28)だけではない。
6月18日、元パ・リーグの強打者、中村紀洋(36)の代打アーチが横浜ベイスターズの勝機を引き寄せた。「変化球にヤマを張って、(実際に投げ込まれた)直球に対応した」(試合後の囲みコメント)というから、長く対戦してきた杉内俊哉(30=ソフトバンク)の投球を熟知した結果である。
そんな中村ノリの復活弾も衝撃的だったが、同日の横浜対ソフトバンク戦は、『チーム再建』について考えさせられるシーンも見られた。
中村ノリの一撃を自分のことのように喜び、ホームベースまで出迎えたのが、渡辺直人(30)だった。渡辺は昨季まで中村ノリと同じ楽天でプレーし、トレードで横浜にやってきた。過去、この2人が親密だという話は聞いたことがない。何よりも、渡辺と言えば、横浜移籍が決まった際、楽天ナインが「何故!?」とフロントに抗議し、惜別の涙を流したほど信頼されていた選手である。同じユニフォームを着る仲間の成功を自分のことのように喜び、チームを牽引する…。渡辺の人柄はもちろんだが、彼のような選手がいれば、チームは自ずと強くなっていくはずである。
一方の楽天だが、その渡辺を放出した“非情なトレード”について、楽天コーチ陣が少しずつだが、口を開くようになった。
「(渡辺放出を泣くのは)間違った仲間意識というか、友達じゃないんだから」
これは仁村徹コーチが各メディアに発しているコメントである。
プロである以上、チームメイトもライバルだと教えていた。正論ではあるが、楽天のチーム再建はあまり進んでいない。
星野仙一監督の口から出るのは、ミスや敗戦、緩慢プレーを嘆くものばかりだ。
低迷するチームは影で選手が首脳陣を、首脳陣が選手を非難するという。星野監督も次の策を考えてはいるだろうが、今の楽天にはベテラン・山崎武司に継ぐチームリーダーが見当たらない。渡辺放出の痛手と、彼を得た機知。どちらがプロフェッショナルの集団か? その是非はともかく、横浜と楽天はともにチーム再建の目標こそ同じだが、進む道程は全く違うようである。(スポーツライター・飯山満)