ある専門医に聞いた。
「死亡原因の1位から後退したとはいえ、結核患者は年間3万人程度が新たに発症しています。WHOが警告を発しているように、抗生物質が効かない、治療法の無い感染も拡大しているからだと思います。加えて、ハイリスク集団として、結核の高蔓延国からさまざまな目的で日本に入ってくる外国人にも目を向けなくてはならない。彼らは感染防止上の問題を多く持っている可能性が大きいことが考えられていますのでね」
WHOなどによると、世界では総人口の約3分の1(20億人)が結核に感染しているといわれる。この数字を見ただけで、結核という病気は“古くて新しい病気”と言えるのではないだろうか。
日本における結核の現状は、全国に蔓延していた時代から、高齢者などの都市部を中心に患者が集中する時代に変わってきている。しかし、依然として主要な感染症である事に変わりがなく、世界の中でも「結核蔓延国」とされていることを我々は自覚しなくてはならない。
現在の高齢者は、若いころに結核流行時を経験している人も多い。「一度体験すると感染しない」という説もあるが、体力、抵抗力が低下したときに、眠っていた菌が目を覚まして発病するともいわれている。
逆に若い世代は未感染のため、菌を吸い込むと感染しやすく、比較的早い時期に発病しやすくなる。
また一方ではエイズ患者が日本で増加の一途たどっているといわれ、その数はすでに2万人超。これらの患者が結核菌に感染すると命取りになり、専門家は「結核とエイズの合併は、今後問題となる危険性をはらんでいる」と警鐘を鳴らしている。
では、どうしたら結核から逃れられるか。重要なのは以下の3点だ。
(1) 睡眠を十分取る。
(2) 適度に運動をする。
(3) 好き嫌いせず、バランスの取れた食事をする。
そして次なる症状がある場合はすぐに専門医を受診しよう。
「長引く咳(2週間以上)がある」「痰が出る」「長引く微熱」「長引く倦怠感(体がだるく活力が無い)」「腰の痛み」「体重減少」
「今、抗生物質が効かない感染の拡大が問題になっているが、もうひとつある。それは若い医師が結核について気づかないケースがあることです」
と言うのは、東京社会医学研究センターの大畑保氏だ。
「日本では結核の患者数が減ったため、結核を疑わない医師が増えているんです。めったに診ないので経験が積めない。結核は検査しても見つからないこともあります。症状が風邪に似ていることもあるため、勝手に風邪と判断して放置する結果になっているのでしょう」(同)
いずれにしても、抗生物質が効かない『多剤耐性結核』を発症すると、治療に2年近くかかるといわれ、聴力障害やアレルギー反応、うつ病などの副作用もあるため注意が必要だ。
結核は、まだ制圧されていないのだ。