待ちに待った小倉。夏女の躍動する季節がやってきた。「暑い時期は本当にデキがいい。毛ヅヤひとつとっても、冬場とはまるっきり違うんだから」。薄くビロードのような光沢を放つコスモプラチナの馬体を思い浮かべながら、増井助手は笑みを浮かべた。
夏場の強さは、実績が物語っている。500万を勝ち上がったのが3年前の7月、1000万を卒業したのが一昨年の7月、そしてオープン入りを果たしたのが昨年8月、新潟の天の川Sだった。夏を迎えるたび、自身のキャリアを着実にアップさせてきた。そして今年の夏はサマー2000シリーズ制覇という大きな野望まで視野に捉えた。
はずみがついたのは前走、重賞初VとなったマーメイドSだ。GI馬リトルアマポーラはじめ、ベッラレイア、ザレマなど、なかなかのメンバーがそろっていたが、堂々といつもの逃げに出た。
開幕週の馬場に助けられたとはいえ、直線では追いすがるニシノブルームーン、リトルアマポーラをしり目にもうひと伸び。1馬身4分の3差をつける完勝だった。
「バッチグーの展開。ジョッキーが完ぺきな騎乗をしてくれた。開幕の馬場も良かったかもしれないけど、それにしてもしぶとく強い競馬だった」と宮調教師は成長を感じ取った。
6歳の夏。早熟が多い牝馬にしては遅れてきた充実期だが、父は晩成タイプのステイゴールド。まだ奥はある。しかも、先日の宝塚記念を制したドリームジャーニーが昨年の小倉記念も勝っているように、体力を消耗する季節でこそ生きる血統だ。
「前走後は短期放牧を挟むいつものパターンで仕上げた。体に丸みがあって張りもある。ハンデも54、55キロなら問題ない。気分よく走れれば少々のハイペースでもバテない馬だし、小回りならさらに粘りが増す」と師が言えば、増井助手も「平坦ならためるより大逃げがいい。この馬のレースをすればチャンスは十分ある」とうなずいた。
旬を迎えた夏女は、ただ我が道を行く。