「共同通信杯(2007年インパーフェクト)のときも独特の雰囲気を感じたけど、今回はGIだし緊張しますよ。結構、小心者だし(笑)。でも、ワクワクしますね。ウェーブの力が見劣りするとは思ってないので、全力を引き出せるようリズムを合わせて乗りたいです」
JRAは06年に初参戦以来87戦したが、GI騎乗は初めて。大舞台を前に緊張と期待が徐々に高まっていく。
御神本騎手といえば騎乗センスの高さから「天才」と評されることも多い。騎乗姿勢は人馬一体のリズムが聞こえてくるようにきれいだ。ただ、本人は「センスがないとは思わないけど、僕くらいの騎手は沢山いる。天才とは思っていない」と謙虚。「騎手学校時代から人一倍努力してきたと思うし、今もレースビデオを見たり勉強しているからね」
「天才」のひと言で片付けられたくない。そんな思いも見え隠れする。益田競馬から大井へ移籍して波に乗りかけたときに落馬で大ケガを負い、引退の文字が頭をよぎったことさえあった。復帰のための苦しいリハビリは才能だけではとうてい超えられない壁でもだった。
07年はリフレッシュ休養を取ったように騎手として、さまざまな思いに揺れ、もがいた年でもあった。そんな中、地方馬によるJBC初制覇という歴史に残る偉業をやってのける勝負強さ。「JBCの時のように攻めの気持ちで乗りたい」という力強い言葉に、再び大きなことをやってくれるのではという期待を抱かせる。
等身大の悩みを抱える青年だったり、強烈な輝きを放つ名手だったり。予測不能な魅力からいつの間にか目が離せなくなった。