「新年早々の1月5日、トランプ氏はツイッター上で『トヨタ自動車は新工場をメキシコに建設するようだが、絶対にダメだ! 米国に工場を建設しなければ重い国境税を課す』と宣言しました。世界販売台数トップの座を独フォルクスワーゲン(VW)に奪われたトヨタにとって、米国をはじめとした北米市場は世界一奪還を左右する最重要マーケット。トヨタグループ(ダイハツ、日野を含む)の2017年世界生産計画は1036万台と過去最高水準ですが、これはトランプ政権による公共投資拡大や減税、雇用政策重視によって米国市場が刺激されそうなことを見込んだものでした」(トヨタウオッチャー)
トランプ次期大統領は米国・カナダ・メキシコ3カ国の関税が完全に撤廃されているNAFTA(北米自由貿易協定)に対し否定的だ。特にメキシコに対しては、米国の雇用が奪われたとして「メキシコとの国境に壁を作る」「国境税を課す」などと発言し、目の敵にしている節がある。
「日本の自動車メーカーは北米3カ国の関税が撤廃されていることを利用すべく、彼の地に生産拠点を設置してきました。トヨタも例外ではなく、昨年11月にはメキシコ新工場の起工式を終えたばかり。トランプ当選が決まるや、見込んでいた投資額を大幅に見直すなど“保護主義新政権”への対応を取り始めてはいたのですが…」(同)
トランプ氏の意向は自動車業界全体に波及しており、自国のメーカーであるフォードでさえ、1月3日にメキシコの新工場建設中止を発表したほどだ。
「グローバル連結利益で北米事業が4割を占めるトヨタは、米国政府から敵対視されることは絶対に避けなければなりません。中国市場が主力のVWとは違うのです」(同)
どうやらトヨタは、ソフトバンクの孫正義社長並みの“ゴマすり攻勢”を発動しなければ、死活問題になりかねないようだ。