高校中退後、地元東久留米にサヨナラを告げ、流れ流れて上野のキャバクラに勤められるまでに“出世”した、藤堂麗子さん(仮名・25歳)。彼女も思い込んだら命がけの元ヤン女である。
惚れたらタトゥーを入れる性質が仇となり、左腕には描いては消した名前が引き攣れに。それだけ熱い女ですから、相手を間違えると手痛い目にも遭ってしまう。
そんな彼女、『喧嘩上等』を『同伴上等』に置き換えて、オープン・ラストのレギュラー勤めで、店の売り上げは常にナンバー1、2をキープ。そこまでがんばるのは、彼女が婚約者の“命”を支えているという使命があるからだ。
伝説の女子ヤンキー本『ホットロード』と『ハイティーン・ブギ』を叔母さんの本棚から拝借して読み耽った小学校時代を経て、読書傾向は必然的に雑誌『ティーンズロード』『チャンプロード』へ。
折りしも世間は援交全盛期。同年代の女子たちが渋谷、池袋で春をひさいでいるのを尻目に、中学生の彼女はヤンキー誌の文通コーナーを通じ、北海道のヤンチャ少年と手紙で“小さな恋のメロディ”を奏でていたという。
「一度も会わないまま、彼がネンショに入って自然消滅しましたね。まあその頃には私も族の先輩と付き合い出してたから…」
高校入学後、裏地に昇龍、背中にビシッと刺繍文字が入った特攻服を特注すべく、スナックでバイトを始めた麗子さん。やがて朝起きれなくなり高校中退。その後、お水の道を歩き始めたわけである。
昔はジャージの着こなしの上手い男に弱かった彼女も、お水歴が長くなるほど、チンピラテースト溢れるベルサーチの粋な着こなしに一発KOされてしまうように…。
“婚約者”の男性もそんな出で立ちで颯爽と登場し、麗子さんのハートをワシ掴みにしてしまった。
「服装とかガタイとか、野球選手かと思った。その日から毎日お店に会いに来てくれた。同伴もアフターもずっと一緒だったよ。でも全然口説かれなくて、きっと私のことは別に好きなわけじゃないよなと思って」
そんなある日のアフター。実は…と男は自分の本当の職業を打ち明け、そんなことをやってる人間が好きだなんて、言う資格はないが、麗子さんを女として好きになってしまったと告白した。
「ずっと金融業と言ってたけど、本当は振り込め詐欺の元締めをしてるって。でもそんな風に愛を告白されたら、女は弱い。元から好きな人だし。振り込め詐欺とか関係ない。どんどん彼にのめり込んで1秒だって離れたくなくて」
交際を始めて1か月。彼にプロポーズされ舞い上がった矢先、事件が起きた。
「彼の部下が振り込め詐欺の収益8000万円近くを持って飛んだんです。とりあえず今月の上納金だけでもすぐに払わないと、東京湾に沈められるって。今からその部下を自分は探しに行くし、上納金も多分払えないから、組からは追われることになるって」
麗子さんとすぐにでも籍を入れたかったが、今となっては自分と一緒にいると麗子さんの身が危険であると。
「彼に別れを切り出されたんですが、別れられるはずない。で、私、貯金が1000万円ちょっとあったんです。だからソレで何とかなるんじゃないかと思って。これで上納金と、逃げた部下を捜す資金にはなるかもしれないでしょう。彼はずっといらないって言ってたけど。無理やり渡しました」
その後、彼は部下を捜して全国行脚中である。その捜索・逃亡資金を稼ぐため日夜必死に働く麗子さんなのだ。
「週に1〜2回は電話で話してますが、会えるのは月に1度程度。その時お金も一緒に渡してます。指定される場所は都内だったり、関西だったりとバラバラで。それだけ大変なんだと思う。部下は多分見つからないと思う。ほとぼりが冷めたら一緒に沖縄で暮らそうって彼と話してます」
そうこうするうち、もう1年である。最初に渡したお金も入れると、貢ぎ額はざっと1700万円。しかし、これが彼女の生き甲斐となっているなら、何も諭す必要はない。
元ヤン女は金のワラジを履いてでも探せ…である。
*写真は本文とは関係ありません