つまり深キョンと親密な間柄になりたければ、まずは愛犬と仲良くなることが近道となる。例えば自分も犬を飼い、彼女が犬の散歩している際に話しかけ、愛犬家同士で関係を深めていくというのがもっともナチュラルな手法であるが、犬を飼うというコストを考えるとなかなか実践できる者は少ないだろう。
そんな場合はまずローストチキンを用意しよう。犬と仲良くなるためには好物を差し出すのが一番。しかしチキンをまるごと外に持ち出し闊歩していては、かさばる上に不自然なため、ローストチキンの皮だけを剥ぎ通り、自分の手の甲などに貼り付けよう。今の時期、外は寒いので防寒具としてローストチキンのパリパリ皮を人間の皮膚の上に引っ付けていてもなんら不自然ではない。そこまで準備が整ったら、公園で犬と散歩する深キョンに接近。お散歩仲間といる深キョンはきっとおしゃべりに夢中だ。そんな彼女のそばにいるワンちゃんにそっと近づき、頭を優しく撫でてみよう。すると…。
「ほ、ほ、ほぎゃぁぁぁぁああーー!!」
なんとたまたまローストチキンの皮を手に付けていたものだから、深キョンの愛犬がこちらの腕をガブリ! その声に驚いた深キョンはこちらを振り返ると「大丈夫ですか?」と心配そうに声をかけてくる。これはローストチキンの皮が招いた偶然の事故に過ぎない。そのため深キョンには一切非がないにもかかわらず、心優しい彼女は「病院に行きましょう」と勧めてくるはず。しかしここはあえて「自分…、病院嫌いなんすよ!」と言っておくといい。今の時代、骨が折れても病院に行かないという人は珍しくない。ここはあえて我慢するのだ。すると腕から溢れ出る大量の血液を見た深キョンは「せめて私の家で手当てだけでもさせてください」と提案してくるはず。
犬の散歩といえば自宅から半径数百メートルの場所を移動する場合が多い。そのため近くに、深キョンの自宅があるはずなので、ごく自然に自宅へ招かれることとなるのだ。この方法は多少の痛みを伴うが、深キョンと仲良くなれるのであれば腕の1本や2本惜しくないというのが男の本音だろう。
深キョンに怪我の手当てされた後、一度立ち上がろうとするも大量出血のため眩暈が起こるはず。「う…、なんだか眩暈が」とフラついていると、体力が回復するまでゆっくり休むようにと、優しい彼女ならきっと言ってくれる。その滞在が2日、3日と続けば、いつのまにか深キョンとの同棲生活がスタート! という流れも十分考えられるのだ。
以上のことから、たとえ腕を引きちぎられるなどの過酷な状況を課せられたとしても、相手を許すこと。そんなブッダの教えこそが、愛する人と関係を深めるうえでもっとも重要なことなのである。
(文・柴田慕伊)