ちなみに、彼の下の名を「龍太郎」という。彼が面接に行った先の企業は面接後、即座に彼を採用したというのである。この不景気な世の中、そんな企業がはたしてあるのだろうかと、皆さんは思われるであろう。だが、彼を面接した企業の部長は、即座に彼の採用を決めたというのである。B君は実際に数社の企業を経験し、年齢的にもハンデを持っていた。
彼が出社して数日が経ったある日、彼は会社のタイムカードに注目をした。彼と同じ「龍太郎」が、他にもう一人存在していたのである。しかも、その龍太郎君はB君が入社する、僅かひと月前に採用された新人だった。
昼食時間になると、食堂では毎日二人の龍太郎君が同じテーブルで食事をしていたという。
その後、最初の「龍太郎」が自己都合で会社を辞めた。その時B君は、これは単なる偶然だと思ったそうだ。だが、その後しばらくして、同じ「龍太郎」君が新入社員として入社したのである。B君はその時、これは偶然ではなく、恐らくは自分と同じ名前の人間を、企業側で故意に採用しているのではないかと思ったという。同じ名前の人間を、三人も連続して採用する企業がこの世にはあったのである。
現在、彼の会社には同じ名前が二人いる。彼がこの企業に勤めて、既に三年以上経った。
近頃この企業に、派遣社員が一人採用されたそうだ。その派遣社員の名前は「龍本源太郎」という。B君曰く、「龍太郎」の名前を企業側で探したが、該当する名前がなくて苗字と名前で「龍太郎」となる人物を、あえて企業側で採用したのではないかということである。
(藤原真)