通常ではウイルス感染が先行して広範囲に粘膜を傷つけ、次いで傷ついた粘膜に細菌感染が起こり、肺炎になるが、この時の細菌は、以前から棲みついているものが、悪さをすることが多い。中でも肺炎球菌による感染症は3割以上あるといわれる。
肺炎球菌による肺炎は、潜伏期間が1〜3日とされ、風邪と同じようなノドの痛みなどの症状が出るため「風邪がこじれたか」と思いがちになる。だが、ここは「ひょっとして肺炎か」と疑い、すぐに受診することを勧めたい、と前出の久富院長は言う。
そしてさらにこう説明。
「肺炎の合併症は、副鼻腔炎や中耳炎など軽いものから、髄膜炎をはじめ生死に関わるものがありますので、軽く考えないでください。今日の高齢社会は肺炎で苦しむ人が増えていますから、予防は欠かせません。そのための一番の方法は、肺炎球菌のワクチンを接種することです」
その違いは、予防接種を受けていれば抗生物質が効きやすく、肺炎の重症化を防ぐメリットがある。予防接種は肺炎球菌以外の病原菌による肺炎には効かないものの、肺炎の50%以上が肺炎球菌とされるから、接種は有効だという。
特に気道が閉塞状態になる病気(COPD)や喘息などの呼吸疾患、糖尿病、肝臓病、腎臓病、心臓病などの慢性疾患のある人は、肺炎が重症化しやすいので、同種のワクチンの接種が重要だと他の専門家も口を揃える。
「風邪の感染経路は、飛沫からよりも、ウイルスが手に付着し、その手で顔を触る“接触感染”が多いとの研究報告があります。とにかく無意識な行動で感染しますから、それを防ぐ意味でもマスクは有効です。電車内や職場で鼻を触ったり、目をこすったりしないよう心がけましょう」(久富院長)
肺炎球菌ワクチンについて付け加えれば、ワクチンの効果は5年が目安。再接種が認められているので、風邪などで不安が生じたなら、医師に相談して接種をもう一度受けるのもいいのではないだろうか。
65歳以上の人なら、1回はワクチン接種しておくのが無難だろう。いずれにしても、中高年者で、体力の落ちている人は、発熱や咳などの症状がなくても、食欲の低下だけでも肺炎を起こしているケースがあるといわれる。体調不良を感じたら放置しないことが肝要だ。
自冶体によっては、接種費用を助成してくれるところもあるので、事前に調べておくのも大事なことだ。