お店にもよるけど、一日借りて500円とか。しょぼい服しか残ってないときもあるので、そういうときはやはり自分の服を持っているほうがお客さんにもうけがいい。
ある日やぼったい新人(キャバ未経験)の子がやってきた。
当然といっていいのか、衣装なんて持ってないから店で借りることになるのだが、ある女の子が気を利かせて「良かったらわたしの着る?」とドレスを差し出した。やぼったい新人ちゃんはそれはそれは喜んでいた。
しかし、服を貸すというのはリスクの高い行いだったりする。
その日の営業が終わったあと、服を貸してあげたキャバ嬢、ミカが一息つきながら携帯をチェックしているところに、同僚のリサがやってきて「ミカちゃん、ちょっと…。あの子に服貸したの?」と声をかける。
「うん、貸してあげたよー」
「あーあ…」
何が起きたか分かっていないミカ。
「こんなこと大声でいっていいのかわからないけど…、あの子腋臭だよ?」
「えぇぇぇっ!!」
腋臭と言ってもレベルがあるので、服を貸してあげるときに気づかないというのはそこまでひどくはないのかもしれない。
が、しかし他の子が気づいていたとなると、それは個人の臭覚にもよるどろうけど、やはりそれなりにキビしかったのかもしれない。
どちらにしても、ミカの服は腋臭の臭いが附着したことになる。
「腋臭って本人自覚してて借りたなら、それ確信犯でしょ」
「そうだよね…」
しかも、その新人キャバ嬢は、ミカに服を直接返すことなく、更衣室のドレッサーに無造作にぽんと置いたままさっさと帰ったらしい。仕事終わりの疲れもあいまって、こういうときに、私たちキャバ嬢は、怒りがおさまらなくなったりするのであった。
文・二ノ宮さな…OL、キャバクラ嬢を経てライターに。広報誌からBL同人誌など幅広いジャンルを手がける。風水、タロット、ダウジングのプロフェッショナルでもある。ツイッターは@llsanachanll