白鵬はこの場所、双葉山の前人未到の69連勝にチャレンジしたが、2日目に平幕の稀勢の里に敗れて、連勝記録は63でストップ。それでも、3日目からは持ち直し、年6場所中5場所を制する偉業を達成した。年間を通しても、86勝4敗の圧倒的な強さを見せ、昨年、自身が作った年間最多勝記録に並んだ。
九州場所では地元の声援をバックに、“万年カド番大関”の魁皇が、健闘を見せ、優勝争いに絡んだものの、13日目に白鵬、14日目に豊ノ島に敗れ脱落。12勝3敗に終わった。
準優勝となった西前頭9枚目の豊ノ島は、野球賭博に関与したとして、7月の名古屋場所は謹慎となり、十両に陥落。先場所(秋場所)、十両優勝を果たし、幕内に復帰して初めての場所となった。豊ノ島のがんばりは大いに評価されるべきだが、前頭9枚目とあって、本割りで白鵬との対戦はなし。この地位では、横綱に大きなプレッシャーを与えるには至らなかった。
情けないのは、魁皇以外の大関陣だ。把瑠都の11勝4敗が精いっぱい。琴欧洲は8勝7敗で、勝ち越すのがやっと。日馬富士に至っては、3連敗の後、休場。4人も大関がいても、魁皇以外は白鵬を脅かすには至らぬ体たらくだった。
1月の初場所で優勝した朝青龍が、場所後に引退。白鵬は切磋琢磨するライバル不在が続いている現状。これでは、白鵬とはいえ、慢心する懸念もあるだろう。
だが、「白鵬は朝青龍と違い、横綱としての自覚があります。彼にかぎって慢心はしないと思います。しかし、ライバルがいてこそ、より強くなるもの。ひとり横綱では負担が大きいのです。早く新しい横綱の出現が望まれます。ですが、現状では、それも厳しいです。来年も白鵬の独走は続くでしょう」(ベテラン相撲記者のA氏)。
新横綱の誕生は協会の悲願ではあるが、当面は白鵬独走の状態は続きそうである。
(ジャーナリスト/落合一郎)