5月場所後の栃ノ心以来となる新大関誕生となれば、好角家たちにとっては喜ばしい出来事となることは間違いない。また、他の力士たちにも、非常に大きな刺激がもたらされることだろう。しかし、これがそう簡単な話ではないこともまた事実だ。
「三役直近3場所で33勝」という、大関昇進の大まかな目安。これを額面通りに捉えるならば、5月場所で9勝、7月場所で13勝を挙げている御嶽海には、来場所11個の白星が求められることになる。
ただ、御嶽海が三役で2ケタ以上の白星を挙げたのは今回が初めてで、三役以外幕内を合計しても2ケタ以上は今回を含めて17場所中5場所だけ。また、目安をクリアする11勝以上となると、その数は3場所とさらに減少、確率にすると約17.6%となる。これだけを見ても、昇進への道のりが容易ではないことが大いに伺える。
加えて、前述の報道の中では、昇進を判断する阿武松審判部長が相撲内容も重視する意向であるということも合わせて伝えられている。冒頭でも触れたが、今場所は上位陣に休場が相次いだということが大きな理由だろう。
8場所連続休場中である横綱稀勢の里の出処進退は不明だが、恐らく白鵬・鶴竜の2横綱、そして、昇進早々カド番となる大関栃ノ心は9月場所で土俵に戻って来る。この3人に対する御嶽海の過去の対戦成績は、白鵬に2勝6敗(2017年3月場所の不戦勝を含む)、鶴竜に3勝4敗、そして、栃ノ心に2勝5敗。内容面で好印象を植え付けるには、こうした分の悪さも覆さなくてはならない。
勝ち星・内容で高いハードルが課せられている御嶽海の大関取り。気鋭の25歳は、この難題にどのような答えを出すことになるのだろうか。
文 / 柴田雅人