このエピソードは、2008年に明石家さんまが総合司会を務めた『27時間テレビ』(フジテレビ系)での出来事だと思われる。同番組の後半、前日から不眠不休でテレビ出演を続けていたさんまは、疲労困憊状態にあった。そして声をガラガラに枯らしながら、お台場のフジテレビ本社から次の現場である『ネプリーグ』収録スタジオに移動中、ダウンタウンがMCを務める音楽番組『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』のスタジオを通りかかる。
そこでさんまは、「俺、ダウンタウンと(司会を)変わってもらってもいいか?」と冗談交じりに提案。するとスタッフやアナウンサーの制止を振り切り、収録中のスタジオに乱入した。しかし舞台に上がった直後、声がうまく出ず、ジェスチャーでコミュニケーションを取ろうとするさんまに、浜田は「なにをしてますの!? はよ喋りなはれや!」と強く頭を叩いた。これにさんまは、一瞬、驚いた表情を見せ「挨拶してんねん!」と浜田の頭を叩き返したのである。会場は笑いに包まれたが、この時、浜田の中には独特の緊張感が生まれたのかもしれない。
そしてしばらく両者の会話が続き、さんまは疲労からその場に座り込むと、浜田は「あぐらかいて落ち着くなよ!」と声を荒げ、ツッコミ続けた。するとさんまは浜田を指差して「お前、先輩に対して、なんちゅう口の利き方や! 落ち着かなくなった俺はどうしてくれんねん。ええ加減にせえよ!」と逆ギレし、浜田は「はい、すいません。ほんとすいません」と真顔で謝罪。だがここで浜田は引こうとせず、今度こそ座ろうとしたさんまに「座んなよ! おい!」と怒鳴ると、さんまは浜田の腕を引っ張り、再び頭を叩き返した。
するとその直後、さんまが突然、両手を前に出すポーズをすると、浜田は「わ!!」と、全身をびくつかせ、本気で驚くリアクションを見せる。これはさんま扮するアミダばばあのポーズだったのだが、これまで目の笑っていないツッコミ返しが続いたことで、浜田は内心怯えていたのかもしれない。これには松本も「ほんまにビックリすな!」とすかさずツッコミを入れた。そんな本人たちの間では緊張感の漂うやりとりが続けられながらも、観客はこの共演に大盛りあがり。スタジオは笑いに包まれたまま、さんまはスタジオを後にした。
それから2人は、『笑っていいとも! グランドフィナーレ』でも再び共演することとなる。タモリ、さんま、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、とんねるずなどが夢の共演を果たす直前、ダウンタウンは、ウッチャンナンチャンと共に楽屋で作戦会議を行っていた。その時、松本が出した提案が、舞台に上がる際、浜田がガムテープでさんまの口を塞いではどうかというもの。これは過去の舞台にて、さんまからガムテープで貼り付けられた経験から生まれた提案だった。
だが浜田は『27時間テレビ』のやりとりがトラウマになっており「そんなんできへん! 怖い、怖い、怖い」と完全拒否。その話し合いの最後まで「それはできへん」と拒み続けていたという。しかし舞台に上がる直前、松本がふと横を見ると、浜田は右手にしっかりとガムテープを握りしめスタンバイしていた。そして『いいとも』登壇後、すぐ彼は「(話が)ながーーい!」と、さんまに開口一番近づいていき、ガムテープを貼り付けたのである。そしてその後も、ボケ続けるさんまに、浜田は臆することなくツッコミ続け、場の空気を支配していく。
この時の心境について浜田は「もうあれはちょっと出にくかったけど、潰しゃなしゃあないと思って。あの空気を」と出番直前に覚悟を決めていたと告白。さらに大御所をツッコむことについても以下のように語っている。
「怒られたら怒られたですよ。それも勉強ちゃいますか(笑)。それに外から見たら、わーわー勝手にやってるように見えるでしょうけど、普段からちゃんと関係性を作ってますから。自分で言うのも何やけど、けじめはちゃんとしておかないといけない。(略)それをできる関係性ってのは当然あって、それを知らんで踏み込むとえらいことになる。(関係性なく)外からいきなり来たやつが、『やっていいんや』と思ってどついたりすると、そりゃ絶対許されない」
テレビでは大御所相手にでも、自由にツッコミ続けているように見える浜田。しかしその裏では相手に礼儀を尽くし、敬意を払うことを忘れないようだ。
【参考】
・FNS27時間テレビ(フジテレビ系)2008年7月26日
・HEY!HEY!HEY! 春 SP(フジテレビ系)2014年4月7日
・ダウンタウンなう(フジテレビ系)2017年9月15日
・HAMASHO(読売テレビ・日本テレビ系)DVD特典映像
・笑っていいとも! グランドフィナーレ(フジテレビ系)2014年3月31日
(文・柴田ボイ)