問題の映像には体長が約20メートルほどある巨大生物が写りこんでいる。濃いこげ茶の体色をした巨大生物が、悠々と湖を泳いでいる姿が撮影されていたのだ。しかも時折、鯨のように潮を吹いているのも確認できる。
事実、ヴァン湖には古来から巨大な怪物が住んでいるという伝説が残されている。その名称は残念ながら今話題の「ジャノ」ではなく「ヴィシャップ」というドラゴンタイプの怪物だが、今回巨大生物の映像が撮影されたことから、「ドラゴン伝説は、この巨大生物がモデルであり、事実であった!」と現地住民の間で大騒ぎとなった。
しかし、経済効果を期待する現地の人間の希望を裏切るかのように、現在ジャノの存在は、複数のUMA研究者によって否定され始めている。ジャノが生息するヴァン湖とはトルコ最大の湖であり、大きさは琵琶湖の約5倍といわれている。面積が3320平方キロメートルで水深は1718〜1720メートルあり、一見、巨大生物が生息している可能性も十分あるように思われる。しかし、ヴァン湖は塩水湖なのだ。塩水湖とは読んで字のごとく、通常の淡水湖よりも非常に塩分濃度の高い湖のことだ。ヴァン湖の塩分濃度はpH9.8で、その数値は海水よりも高くアルカリ性であるため、巨大生物の餌となるべき生物が生息することはできない。当然のことながら、餌のないところに巨大生物が存在することはできない。しかし映像が撮られているからには、何らかの巨大生物が存在することになる。
その巨大生物の正体は、遊泳中の象ではないかとの見解が強かった。確かに象が水浴びのためにヴァン湖を泳いでいたのであれば、巨大生物に見間違えることもないとは言えないだろう。水上に出ている頭部らしき部分は象のようにも見える。また、この映像自体、意図的なやらせではないかという意見も出てきている。そんな中、怪獣デザイナーであり、UMA研究家でもある岡本秀郎氏が新たな説を提示した。それはなんと、ジャノという巨大生物そのものが存在しなかったという説である。
岡本氏が指摘するのは、ジャノの公開映像の中の1分1秒のシーンである。ここには水中に沈めた張りぼてがしっかりと映し出されているのだ。つまりジャノの正体とは、張りぼてを船で引っ張り、巨大生物に見せかけたものであった可能性がありうる。昨今、数多くのUMAが写真に収められているが、ぼやけて判然としない等、明確に判断しづらいものが多い。その中で、明確に映し出されたジャノの姿には誰もが目を疑い、UMAは実在するのだと信じた。
しかしリアルな映像であるが故、その正体もはっきりと映し出されてしまったのだ。UMAとは、あいまいな世界にのみ存在しうる生物で、明瞭でリアルな世界では生きていけないものなのかもしれない。
だが、山口敏太郎とNMR特捜班はUMA確認の希望を捨てたわけではない。今後も精力的な取材を行っていく。