自民党の各閣僚は民主党代表選前日の15日、きわめて分かりやすい反応をみせた。小沢一郎代表の辞任表明から1週間足らずの後任選びを批判。解散総選挙で戦う相手に塩を送るバカはいなかったが、取りようによっては意味深なコメントでもあった。総選挙後の大連立を視野に入れているのか、と勘繰りたくなるような“深イイ”発言だったのである。
野田聖子消費者行政担当相は、鳩山、岡田両候補に関し、「もともと自民党の先輩なので他党の選挙とは思えない」とコメント。その上で「自民党は密室談合を反省して総裁選にじっくり時間をかけたのに、民主党は内向きで速やかに決めてしまう。時代に逆行している」と指摘した。塩谷立文部科学相も「いかにも期間が短すぎる。党の結束につながるのか疑問だ」と述べた。
甘利明行革担当相は「岡田氏が選ばれると、民主党内は相当混乱する」と述べ、岡田氏が代表になれば与党に有利という分析を披露した。
民主党批判は当たり前といえば当たり前。しかし、「もともと自民党の先輩」(野田氏)、「党の結束につながるのか」(塩谷氏)といった発言は解散総選挙後を意識しているようにもとれる。「岡田氏なら混乱」(甘利氏)の言葉は額面通りには受け取れない。むしろ、チェンジ感あふれる岡田氏を脅威に感じているのではないか。
永田町関係者は「自民党の大勢は『鳩山氏で決まってほしい』が本音」と指摘。“小沢院政”のイメージがあるため戦いやすいほか、鳩山代表ならば総選挙で負けても大連立の可能性が残ると踏んでいるからだという。
「実弟の邦夫氏をパイプに“鳩山ブラザース”で大連立を仕掛ける手がある。政策を実現するためには自民、民主の協力が必要。大連立論者の小沢氏が裏方に回ったことで、もっとやりやすくなるはず」(同関係者)
そんなことを知ってか知らずか鳩山邦夫総務相は15日、実兄の由紀夫氏が小沢氏の「かいらい」とされる見方が出ていることを念頭に「かんぽの宿と同じで出来レースは印象が悪い」と案じた。
いずれにせよ、民主党新代表は直ちに執行部づくりに着手、目前に迫った政権交代がかかる総選挙に臨む。党の一刻も早い立て直しが急務だ。