「もしAクラスから転落し、クライマックスシリーズ(CS)に出場できなかった場合には、責任を取って辞任するしかない」
ヤクルト・高田繁監督が悲壮な決意を固めた。
ヤクルトは前半快進撃を続け、3位確保どころか首位・巨人を脅かす位置につけていた。ところが、後半戦に入ってから選手のケガにも泣かされ、急転落。一時は4位阪神と13.5ゲーム差もあったが、14日現在で単独4位となり、5位の広島にも1ゲーム差に詰め寄られる始末。
「チームの覇気も落ちてしまっている。高田監督に同情の余地は十分あるが、責任感の強い性格だけにAクラスを確保できなければ辞任の決断をするだろう。選手のケガで満足なラインナップも組めなかったのが痛いけどね」(ヤクルト担当記者)
頼りの四番・青木宣親がなかなかエンジン全開といかず、打率がいまだに3割にも届かないのも、今のヤクルト不振の要因となっている。しかし、高田監督は一切言い訳をしないのだ。
ヤクルト球団首脳は“高田辞任”について言及はしていないが、もしAクラス確保ができない場合は考えざるを得ないだろう。
高田辞任となった時の次期監督はどうなるかが焦点となってくる。
ポスト高田候補としては、内部昇格ならば昨年から投手コーチに就任している荒木大輔コーチ。外部招へいのケースは栗山英樹氏がメーンとなるだろう。
もう一人、将来の監督候補生としてお墨付きをもらっているのが宮本慎也だ。アテネ五輪、北京五輪日本代表の主将、労組・日本プロ野球選手会会長を務め、リーダーシップを高く評価されたからだ。今季はコーチも兼任している。常識的にいえば、荒木コーチか栗山氏が高田監督の後任監督に就任、その後に宮本監督というのが順当な線だろう。
しかし、有力候補の栗山氏は大学教授、スポーツキャスターを務めるなど、幅広く活躍しており、現場復帰に対する意欲は薄いといわれている。となると、荒木投手コーチが最有力候補に躍り出ることになる。
荒木投手コーチに関しては、楽天でのポスト野村候補に挙がったこともある。
「ワシの後はどうやら荒木らしいぞ。1年間、後任監督候補を預けるので、育ててくれと言われた。荒木に監督などできるのか?」。昨年オフ、去就が注目され、最終的にあと1年だけ続投ということになった楽天・野村克也監督が、昨シーズン中にこう爆弾発言したことがある。
現職のヤクルトの投手コーチである荒木コーチに関する発言だけに、楽天球団首脳は大あわて。ヤクルト球団に対し、「ご迷惑をかけました」と謝罪する一幕まであった。
他球団からも監督候補に挙げられるほどだから、荒木投手コーチの内部昇格がスンナリ決まれば、なんの問題もない。が、高田監督が突然決まったように、人事だけは最終決定するまで何が起こるかわからない。
万が一、高田監督が中継ぎ政権でなくなり、球団側からの強い要請で長期政権になったりすれば、事態は急変する。荒木監督が飛んでしまい、いきなり本格政権を期待される宮本へバトンタッチするという路線も出てくるからだ。
過去のヤクルトは数年で監督交代が日常茶飯事だったが、野村監督が9年、若松勉監督も7年と長期政権が続いた。その後を受けた、南海・野村監督以来という選手兼任監督で話題を呼んだ古田敦也監督は06年3位、07年最下位と、わずか2年で退団している。それだけに、球団側とすれば、短期間にチームを再建している高田監督を簡単には手放せないのだ。
だが、高田監督も一度決めたことは簡単にくつがえさないのは、彼の性格からも分かる。
高田監督が本来の仕事である中継ぎ政権にこだわり、長期政権を拒否すれば、荒木コーチ→宮本という青写真通りになるだろう。古田選手兼任監督が大失敗したばかりだから、宮本に同じ轍を踏ませることはない。となれば、荒木コーチの昇格が最有力となりそうだ。