付き合っていた彼の家に泊まりに行く時は、よくシャワーを借りるということがありました。しかし彼の場合、ただ部屋に遊びに行っただけでも、執拗に『シャワーを浴びて行きなよ』と勧めてくるのです。他にも外で遊んでいるのに、強引にシャワーを浴びるためだけに部屋に連れて行かれたこともありました。別に性的な行為をするわけでもないのにです。それとシャワーを使わせてもらう時は、彼からではなく、必ず私が先にシャワーを浴びるという順番でしたね。
そんなある日、彼がシャワーを浴びている時、暇だったので彼の部屋の奥にある本棚の漫画を読んでいました。すると本棚は二重棚になっており、奥に謎のファイルがあるのを発見。何気なくそれを開いてみると、そこには私の名前と、ジップロックのようなものに保存された髪の毛や体毛が大量に入っていたのです。またそれは丁重に日付ごとで分けられており、私以外の女性の名前もありました。過去の恋人のものだったのかもしれません。
おそらく彼があそこまでシャワーを浴びさせたかった理由は、体毛を収集したかったのでしょう。私がシャワーを利用するたびに、排水溝にこびりついた毛を漁っていたのだと思います。今、思えば私が脱いだ服を彼は、粘着ペーパーのついたコロコロで、何度も掃除していましたから、それも毛を集めるための手段だったのでしょうね。結局、怖かったので、最後まで彼にはファイルを見たとは言い出せませんでした。
彼が集めた私の毛をどのように楽しんでいたのかは、想像もしたくもありません。それからというもの、彼に髪の毛を触られるたびに、あのファイルを思い出してしまうので、早々に別れを切り出しました。
(取材/構成・篠田エレナ)
写真・Candace Nast