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森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★公務員倍増計画

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提供:週刊実話

 2016年にリクナビが行った高校生が就きたいと考える職業調査で、公務員が、女子7位、男子1位となった。ほかの調査をみても、公務員は必ず人気ランキングの上位にいる。それは一体なぜなのか。

 もちろん、公務員にはリストラがなく、安定した職業だという理由が大きいだろう。しかし、もっと大きな理由がある。それは報酬だ。

 今年の人事院勧告後の国家公務員の平均年収は、残業代込みで729万円とみられる。一方で、国税庁の統計によると、民間サラリーマンの平均年収は432万円だ。国家公務員は民間よりも69%も多い年収を得ている。法律では、国家公務員の報酬は民間準拠ということになっているのに、なぜこんなことが起きるのか。

 1つの理由は、民間給与を調べるときに正社員のみを調査対象としていることだ。ただし、国税庁の調査で、正社員のみの平均年収は494万円で、これと比較しても国家公務員の年収は48%も高いのだ。

 実は、人事院が民間給与を調べるときは、事業所規模50人以上を対象にしている。しかも、実際に調べた対象者の83%が規模100人以上の事業所に勤務している。つまり、事実上、国家公務員の給与は、大企業に勤める正社員に合わせていることになる。これが国家公務員の突出した年収を生み出しているのだ。

 一方、日本は世界的に公務員数が極めて少ない国だ。人事院の調査によると、人口1000人当たりの公務員数(地方公務員を含む)は、フランス90人、イギリス69人、アメリカ64人、ドイツ60人に対して、日本は37人にすぎない。アメリカでも、日本より倍近い公務員がいるのだ。

 私は、欧州並みの公務員数にするために、日本の公務員を倍増させてもよいと思う。そんなことをしたら、財政が持たないと思われるかもしれない。しかし、財源は公務員の年収を完全に民間と合わせることで賄えるはずだ。公務員は、リストラがないだけでなく、高齢期まで働ける。現在、年金支給開始年齢に合わせる形で定年を延長する法改正が準備されているから、最終的には70歳まで正社員として働けることになる。それだけの好条件があれば、平均年収432万円でも、十分人材は集まるはずだ。

 それでは、倍増させた公務員をどう活用するのか。まずは、保育や介護分野に人員を回す。公務員として生活が保障されるのであれば、応募者が殺到して、待機児童や特別養護老人ホームの待機高齢者を一掃することができるだろう。

 現在、公務員は地方公務員を含めて333万人いる。それを倍増させれば、現役保育士43万人、現役介護施設職員123万人のすべてを公務員に置き換えても、まだ人員に余裕がある。その余裕は、公営企業に回せばよいだろう。例えば、郵便局員をかつてのように郵政省の職員に戻せば、かんぽ生命の不正営業事件のようなものはなくなるはず。

 もう1つ、公務員の年収を国民全体の平均年収に合わせれば、非正社員や外国人労働者を増やして、所得格差を拡大するような労働政策は、公務員の反対で実現できなくなるだろう。

 平均よりも7割高い国家公務員の年収を是正するのに法改正は不要だ。そもそも公務員給与は、民間に合わせるという法律にそっているからだ。

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