映画でも芝居でも、興行の世界は数字が一番。製作陣に、次回作の製作資金を還流せねばならない。善意ではなく、小屋側の次の飯の種として。隠語があって、アタマとはお客さまの人数。ジュウタンとは有料のお客さまの実数。本当に足を踏み入れた方の形容として秀逸、初めて聞いたときには感心した。タマはずばりお金。ジュウタンが予定数を下回った場合、誰かに補填(ほてん)していただいたりする。そんなこんなの業界で、親しくお導きいただいたS興行会社のS様から、新橋演舞場のチケットを頂戴した。券面には「左の19・20」とあるのみ。はて面妖(めんよう)な。演舞場の客席は、左右に二分して通し番号が振られていたかしら。
案内されて驚いた、桟敷席。座ってさらに驚いた、桟敷席。なんでこんなに舞台が近いの。あんな急角度の座敷がどうして最上級席なのかと、いぶかしく思っていたが納得。1階の客席が一気に消え失せて舞台がぐんと近づき、役者とじかに目が合って困ってしまう(ような気にさせる仕組みになっている)。
演じる側の距離感覚も伸縮するらしく「歴史のある小屋は広さ、高さがあまり気にならず、高座に上がるとお客様が近く感じられる」と、名古屋御園座を初体験した林家正蔵師もおっしゃっている。
プレミアムモルツ小瓶と錫燗酒をそういう。幕間(まくあい)に配膳棚に届けられたが、棚に靴を収納していたため、優しく指摘される。いつか分かりませんが次回は気をつけます。
予算1600円
東京都中央区銀座1-18-2