“もし出勤してるなら店に行くけど、いないなら行ってもしょうがないもんね…”
毎日のように私の携帯へと届くメール。別に彼氏気取りをしているわけでもなければ、よくあるお仕事メールなのだから普通に返信すればいいんだろうけど。
なんだろう、メールが届くたびに湧き上がる、このモヤモヤ感というか、イライラ感。無意識に舌打ちをしてしまうくらいだ。
「そのメール相手がしつこいからでしょ?」
ロッカールームでぼやく私に、萌ちゃんがグサッと突き刺さるお言葉をくれた。確かにそうかもしれない。きっとしつこいうえに恩着せがましいメールの内容に嫌気がさしてるのだ。
恋愛では追うと引かれるなんてよく言うけど、それってこの世界の指名も一緒じゃないかな? なんて思った。
「よっぽどあんたのことがお気に入りなんだね」
「えっ?」
「だってさ、自分が女の子に惚れられてるって自覚してる男は、そんなマメにメールしたり、誘いを断られたくらいでへこんだりしないよ? ましてや、他の女の子とあからさまに違う扱いをするなんてこともないもん」
ああ、言われてみると確かにそうかもしれない。お客さんからすれば、不安でしょうがないからこんなにしつこく連絡してくるんだよね。でも、私たちからすれば、絶対的な自信を持って好意を持たれてるって言える相手から、しつこいくらいに押されると、やっぱり引いてしまうものがある…。
「色恋とかいっても、それなりの距離感は必要だもんね。キャバ嬢とお客さんも、一定の距離感ができてから、やっと男と女としての関係が成り立っていくわけだしさ…」
なんだろう、この説得力のある言葉は。きっと、萌ちゃんには、その“一定の距離”というものをつくりあげたうえで、男と女の関係になったお客さんがいるんだろうな。
とにかく、萌ちゃんの言葉を借りたうえで、ひとつだけ言えるとしたら、しつこいと思われない程度の距離感を保てということなんだと思う。
取材・構成/LISA
アパレル企業での販売・営業、ホステス、パーティーレセプタントを経て、会話術のノウハウをいちから学ぶ。ファッションや恋愛心理に関する連載コラムをはじめ、エッセイや小説、メディア取材など幅広い分野で活動中。
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