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キャバ嬢が生まれる瞬間(1)〜夜の世界に憧れていた亜紀〜

 「このドレス超カワイイ!!」
 「だよね、だよね、このピンクのとか超イイ!」
 「亜紀なら絶対似合うよ!」
 「ドレスの相場は3000円くらいからなんだって、でもどうせなら1万円くらいのほしい!」

 中学の頃からギャル系ファッション誌に載ってるキャバ嬢風メイクやドレスに目が釘付けだった。雑誌を学校に持ち込んでは友達とキャーキャー騒ぎながらページをめくって、色々な夢を思い描いてたんだ。男子達からも人気はあったし容姿には多少の自信はあった。キャバ嬢になれば綺麗なドレスを着てお金だって手に入る。でもお金がほしいわけじゃない。お酒だってそんなに飲めるかわからない。でも雑誌やドラマで見たあの華やかで美しい世界に早く入っていきたかった。

 「亜紀って高校卒業したらどうするの?」
 「もちろんキャバ嬢。若いうちしかできないし」

 キャバ嬢になりたい。いつしかそれが私の口癖だった。今ではテレビや雑誌の影響で女子高生のなりたい職業の上位にキャバクラ嬢がランクインするらしい。お母さんは反対したけど、必死で説得して高校を卒業後は上京。今では念願のキャバ嬢になることができた。

 迷惑なお客さんが来店したり、店の派閥があったりして大変なこともいっぱいある。でも男の人と会話するのは大好きだし、相手がどんなことを求めてるかもわかってるつもり。

 「亜紀ちゃんは芸能人で言うと誰がタイプなの?」
 「う〜ん、志村けんさんかな」

 タイプを聞かれて向井理や水嶋ヒロとか、あからさまなイケメン俳優を名前を出しちゃったりしたらお客さんのテンションはダダ下がり。でも志村けんさんだったら、年上もOKで髪型も気にしない、さらにちょっとエッチなおじさんもイケるんだってことを一気に伝えることができるから高感度アップ。こんな感じでどんな会話や態度で接したらお客さんが喜んでくるのかを考えるのが好き。

 それに夢だった綺麗なドレスも着て働けるのがなによりうれしい。ドレスなんて普通に生きてたら着る機会がないからね。まだまだ駆け出しのキャバ嬢だけどこの世界でがんばっていくつもり。夜の世界はそんなに甘くないのもわかってる。でも私はこのお店で絶対ナンバーワンになってやる!

(取材・構成/篠田エレナ)

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