デビューから無傷の3連勝を飾り、2歳チャンプ決定戦「朝日杯FS」(JpnI 中山芝1600m)では堂々の1番人気に推されたオースミダイドウが、5カ月の沈黙を破り、ターフに戻ってくる。
その朝日杯は持ち前の先行力をフルに生かした積極策から余力ある手応えで4角を回ったかに見えたが、ゴール前で脚色が鈍り、3着に終わった。不可解な敗戦の原因はレースを終えてから数時間後に判明した。左橈骨遠位端骨折(ひだりとうこつえんいたんこっせつ)。手前をかえずに走る不器用さが、初のGIという厳しい舞台で脚元にダメージを負わせる結果となってしまった。
とはいえ、手負いの状況下にして3着に踏ん張るのだから、その潜在能力&勝負根性は見上げたものである。
骨片の摘出手術が行われた後は、管理する中尾正師の意向により、放牧には出さず栗東で静養。「これだけの馬。毎日、状態を見ないとこっちも落ち着かないから」とトレーナーは話す。
そんな陣営の暖かい看護もあり、ダイドウはみるみるうちに回復。一時は春絶望かともされていたが、2月下旬に運動を再開すると、徐々にペースを上げ、乗り込まれてきた。
もちろん、焦りは禁物。「(ケイコのピッチは)あくまでも馬の状態と相談しながら。とくに目標を置かず、メドが立ったところで復帰を…と考えながらやってきた」。慎重には慎重を期したかいあり、日を追うごとにダイドウの気配は上昇カーブを描いている。
すでに、中間は6本の併せ馬を消化。併せる相手も徐々に強化し、1週前には古馬1600万のビッグタイガーをパートナーに6F78秒9 上がり3F37秒4→12秒7(CWコース)の豪快デモを披露。ビッグをあっさり0秒5突き放して見せた。
「併せた相手が前半から遅れてしまい、少しチグハグになったが、ダイドウ自身の動きは素晴らしかった。ともて久々を感じさせないね」
出走するば高い支持を集める馬。ホースマンとして付け焼刃の仕上げで送り出すような無責任なことはできない。師は“勝ち負けできる”と納得の上でゴーサインを出した。
「ただの休養明けとは違うが、自分が過去に管理した馬を含め、五指に入る逸材。この期間に精神的にも強くなっているし、センスも抜群。不安より期待の方が、もちろん大きいよ」
混とんとする3歳マイル路線だが、終わってみればあっさり…。それだけの大仕事をやってのけるポテンシャルがオースミダイドウにはある。