アレとは、今シーズンから導入された低反発の統一球のことだ。
●ヤクルト 37試合=チーム総得点121
●中日 36試合=同119
●巨人 38試合=同121
●広島 38試合=同129
●阪神 38試合=同102
●横浜 41試合=同136
<6月2日時点>
チーム総得点を『1試合平均』で見てみると、ヤクルトが3.27点、中日は3.30点、巨人は3.18点、広島は3.39点、阪神は2.68点、横浜は3.31点。昨シーズンの成績(144試合)は、ヤクルトが4.28点。中日は3.74点、巨人は4.93点。広島は4.13点、阪神は5.13点、横浜は3.61点。つまり、セ・リーグ6球団とも1試合当たりの得点能力は「1点」平均でダウンしているのだ。
「昨季、セ・リーグは『年間200本安打』が2人も出現しましたからね」(プロ野球解説者の1人)
現マリナーズのイチローが『年間200本安打』を達成したときは、“偉業”と騒がれたはず。なのに、ここまで簡単に記録更新されると、試合数が「130」から「144」に増えただけではないだろう。
「個人的には、投手の力量も影響していると考えます。昨季は防御率2点台の投手が広島の前田と中日のチェンしかいませんでした。巨人のチーム防御率が3点台、阪神は4点台、横浜は4.91。乱暴な言い方だが、昨季の横浜は、1試合につき、5失点を覚悟しなければならない状態でした」(前出・同)
統一球が導入された背景には、国際試合があった。とくに投手がそうだったが、代表に選ばれたメンバーから「感触が違う」なるクレーム、違和感が寄せられた。NPBとしても、「球場、球団ごとに試合球が違うのは改めるべき」とし、製作メーカーは1社と定めた統一球が誕生したわけだ。
その統一球の特徴である『低反発性』から、どの球団も「打球の飛距離が落ち、ホームランも減少するだろう」とは話していた。しかし、チーム得点のダウンは統一球のせいだけだろうか。
「何人かの監督が『機動力のアップ』を統一球の対策に挙げていました。どのチームにも俊足の選手も増えていますが、生かしきれていないような気がします」(在京球団職員)
一部関係者の私見だが、従来のペナントレース開幕日直前に震災が起き、「実戦練習ができなかった影響もあるのではないか」と指摘していた。
また、こんな声も聞かれた。某球団のスコアラーが個人的な印象と前置きしつつも、こう言う。
「選手は統一球が『飛ばない』ことを意識しすぎているのでは…。コンパクトにバットを振って芯に充てようとの思いが強すぎるのか、本来のスイングを見失っているのではないか」
同様に、統一球はツーシーム系の小さな変化球を得意とする投手には有利にはたらいたが、カーブ、縦スライダーなどの大きな軌道を描く変化球をウィニングショットとする投手には不向きなボールだという。後者の典型例が広島・前田投手である…。前出のスコアラーによれば、「広島打線はツーシーム系の変化球を得意とする投手に苦手意識がある」という。その通りだとすれば、広島打線の50イニング連続無得点のワースト記録は、統一球による打撃力の低下ではなく、ツーシーム系の変化球がプラスにはたらいた影響だろう。
いずれにせよ、統一球に対する投打の違和感が完全になくなるまで、もう暫く時間が掛かりそうだ。