昨年8月7日、NPBと実行委員会は「引退選手・特例登録手続き」を承認した。それはそのシーズンで現役引退をする選手に限り、引退試合の日一日限定で球団の出場選手登録に追加できる制度。あくまでも追加なので、代わりのプレイヤーを登録抹消する必要はなくなり、球団の功労者に対して引退試合という花道を用意する事が、より容易に可能となった。
☆功労者の引退
ベイスターズでは加賀繁とG後藤武敏の二人が、今シーズン限りでユニフォームを脱ぐことが発表された。球団は二人の功労者に対し、21日に加賀、22日の本拠地最終戦で後藤の引退セレモニーを行うことを決定した。今年の横浜スタジアムは、雨天中止が2試合しかなく、1試合は交流戦だったため既に消化。もう1試合も21日にはめ込まれ、10月にずれ込むことも無く、当初のスケジュール通りに消化した。
☆激化するCS争い
今シーズンのセ・リーグは、3位から最下位が数ゲーム差にひしめき合う大混戦となっており、どのチームがクライマックスシリーズに進出するのか全く読めない状況。もし去年この状況だったとしたら、重要な一軍の戦力を外し、引退するプレイヤーを登録する事が出来たであろうか。
☆少なくなった消化試合
CS制度が導入され、いわゆる「消化試合」が少なくなったため、引退試合を開催することも難しくなってきた。順位がほぼ決まっている状況ならば許されていた試合中のセレモニーを、やってる場合では無いケースが増えてきたのだ。そこで用意された「引退特例」。最後の勇姿を見たい、見せたい。大勢のニーズに応えるためのシステムは、歓迎されるべきであろう。
☆感慨深い引退試合
古くからのベイスターズファンは、98年のV戦士達が、こぞって他球団に移籍し、最後の勇姿を見られず寂しい想いを抱いている。21日に加賀は先発として、1打席だけ登板し三振を奪い、翌日後藤は代打で登場し豪快に三振し、大勢のファンの前で最後の勇姿を披露することが出来た。
DeNAになってからは現小池正晃2軍コーチの涙の引退試合2アーチや、三浦大輔氏のド派手引退セレモニーも行われ、高崎健太郎、大原慎司両氏にも打診があったと聞く。功労者に手厚くなってきたことは選手もファンも嬉しい限りだ。ベイスターズは成績だけでなく心の部分でも、暗黒時代には決して戻ってはいけない。ファンには引退試合を含め、歴史を語り継ぐのも楽しみの一つなのだから。
取材・文・写真 / 萩原孝弘