「絶好調」(西園調教師)の言葉通り、京王杯2歳Sの覇者となったマイネルレーニア。
栗毛の雄大な馬体と、前肢を高らかに舞い上げターフを叩きつける豪快なフットワークは、まさしくグランプリ3連覇(98年有馬記念、99年宝塚記念、有馬記念)の偉業を成し遂げた父グラスワンダーからしかと受け継いだDNA。京王杯2歳Sから朝日杯FSという父も歩んだ栄光の蹄跡を踏むべく、陣営のボルテージも早、臨界点の“熱さ”だ。
「競馬は『ブラッドスポーツ』と呼ばれているが、あの(武)豊が99年の有馬記念でスペシャルウィークに騎乗、ゴール板できっちり差し切ったと思ってガッツポーズ、ウイニングランをして引き揚げてきたのに、結果はグラスワンダーのハナ差勝ち。こういう血の因縁はその産駒たちにも巡るものだよ」と、西園師は開口一番、この2歳王者決定戦で1番人気と目されるスペシャルウィーク産駒の無敗馬オースミダイドウに堂々の挑戦状を叩きつける。
決戦の舞台となる中山のマイル戦についても、「押し出されて目標になった新潟2歳Sこそ不覚を取った(3着)が、自分のペースをきっちり守って走った前走の京王杯は位置取りには関係なく結果が出せた。しかも、不得手の雨も降っていたなかで。とにかく、直線入り口でジョッキーがステッキを落としながらも勝ったダリア賞を見ても分かるように、スピードがあって自分で競馬をつくれる脚質は、小回りの中山1600mにおいては大きなアドバンテージ」とベストマッチを断言する。
古馬1000万のタムロイーネーを外から並ぶ間もなく交わし切った1週前の追い切り以上に、単走で切れに切れた6日の超抜の最終調整(CW6F80秒6、ラスト3F36秒5→11秒2)を目の当たりにすれば、「素晴らしい動きだったし、顔つきはもちろんのこと、日に日に走るフォームが父親のグラスに似てくるんだ」と師のほおも緩んで当然だ。
最後に、「谷口、いい話を教えてあげようか」と、師が私めだけに肩を抱いて耳打ちしてくれた話を内外読者にもコソッとお教えしよう。
「レーニアのネーミングは母親のチェリーラブにちなんだもので、アメリカンチェリーの最高級品種のこと。オレのアンチャン時代から知っているおまえだから覚えていると思うが、初めてジョッキー時代に重賞を勝たせてくれたのがチェリーテスコで、区切りの300勝達成馬がウインドチェリー。そして、調教師になって初めてのGI勝ちが阪神JFのタムロチェリー(01年)。これだけチェリーに縁があるのは、ホント珍しいこと。何だか、プンプン甘い香りがしてるんだ。京王杯2歳Sから朝日杯を勝ってスターダムに駆け上がったグラスワンダーのように」
師の“予言”通り、ここは迷わずサラブレッドの血の魔力を信じてみようではないか。