今年、九州では在日中国人や留学生を狙った「電話詐欺」が相次いだ。中国語で現地警察などを名乗り「事件に関わった疑いがあり、誤解を解くにはお金が必要」と騙す手口で、現金を騙し取られた被害が6月に3件、未遂2件が判明したと福岡県警が注意を呼び掛けた。
中国の犯罪事情に詳しい専門家は、「中国国内の『電話詐欺』の犯人グループが当局からの取り締まり強化を受け、日本在住者を狙ったのではないか」と分析している。早速、九州・山口・沖縄地区の中国人留学生でつくる「九州地区中国学友会」は、無料通信アプリで事件を知らせ、無視するように注意を促した。
「中国国内ではオレオレと同じく現金を騙し取る犯罪もやりますが、公務員や裁判所、公証人、警察などを名乗り、個人情報を聞き出し、そのデータを売る、事故をでっち上げて示談金をせしめる、企業機密をネットから盗み出してライバル企業へ売るなどの手口が特徴で、被害額も35億元(約546億円:2017年度)に達しています。日本の18年度の特殊詐欺の被害総額は約383億円ですから、中国はスケールが大きい」(犯罪ジャーナリスト)
17年に中国当局は、福建省を舞台にした大規模な電話詐欺集団を一斉に手入れし、台湾国籍を含む419名を逮捕した。中国は日本と違い当局に“人権のカベ”がないため、ごそっと根こそぎ逮捕できるのである。
そこで犯罪集団は、日本やインドネシアなど外国に詐欺の拠点を移したようだ。カンボジアのリゾート地シアヌークビルを拠点にした中国人電話詐欺グループが摘発されたケースでは、同地に四川省や重慶市からマフィアが入り込んで、18年、彼らを含む200名を超える中国人が逮捕された。
日本人が中国マフィアと組んで電話詐欺を働くケースもある。タイでは今年、日本人グループ15名が、フィリピンの首都圏にあるマカティ市では36人が、中国人に交ざって逮捕されている。オレオレ詐欺もグローバルスタンダードに変貌しているようだ。