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続々ビッグ・セブンの謎(完)

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画像はイメージです。

 ブラウザゲーム「艦隊これくしょん」に登場する戦艦長門などの「世界のビッグ7」という台詞について、太平洋戦争前には存在していなかった、あるいは日本でのみ使われていたのではないかと、マニアらは疑問に感じていた。しかし、太平洋戦争前の本に日本の長門と陸奥、アメリカのコロラドとメリーランド、そしてウエスト・ヴァージニア、さらにイギリスのネルソンとロドネーを「世界の七大戦艦」と称する記述があり、おそらくは戦後にそれが変化したのであろうと推測された。

 ただし、アメリカでは使用例が見つからず、それどころか自国の戦艦を「ビッグ・ファイブ」と称しており、また当時のイギリス海軍を代表していたのは「戦艦フッド」で、ネルソンやロドネーではなかったことなどから、日本でのみ使われた表現であり、おそらくは戦艦長門と陸奥を宣伝するためのキャッチコピーのような言葉だったのではないかと考えられている。

 とはいえ、たとえ「戦艦フッド」がイギリス海軍を代表する存在だったとしても、ネルソンやロドネーも強力な戦艦であり、それなりに評価されていたのではないかとの見方もなくはない。ところが現実はその反対で、むしろ海軍を悩ませる問題児だったのだ。

 まず、ネルソンとロドネーは強力な主砲と防御を海軍軍縮条約の規定内に収めるため、全ての主砲塔を前方へ集中配置するという、非常に特異なデザインを採用していた。ところが、それによって予想外の不具合が発生し、海軍における評価は散々だった。有名なところでは主砲発射時の爆圧が激しく、後方を射撃した場合には船体や艦橋を損傷する可能性があったことと、低速時の運動性が極端に悪く操船に高い技量が必要だったことなど、様々な問題点が指摘されていた。

 さらに、ネルソンやロドネーは就役から数年後、はなはだ不名誉な事件に巻き込まれている。両戦艦は「インヴァーゴードン反乱」と呼ばれる大規模な水兵ストライキの舞台となり、予定されていた演習へ参加できなかったのだ。最終的には、話し合いによって首謀者が投降したものの、控えめに言っても「世界のビッグなんとか」に入れて顕彰するような存在ではなかった。

 こういったネルソンやロドネーをめぐる雰囲気から、イギリスではアメリカ以上に「世界のビッグ7」という言葉が使われた可能性は低い。それどころか、両戦艦には「不細工船」とか「油槽船みたいなの」とか、不名誉な呼び名が伝わっているのだ。

(了)

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