彼は何でも私に合わせようとする人でした。例えば、私がどんな音楽を聴いているのかを知ると、すぐに楽曲をダウンロードして聴き込み、次に会った時はカラオケで完璧に歌えるようになっていました。また、SNSなどで、友達と観た映画が面白かったと書き込めば、すぐに1人で劇場に観に行き、感想を私に伝えてくるということもありました。他にも、好きな食べ物やテレビ番組など、彼は、私の好きなものに合わせて生活するようになっていったのです。
とはいえ、好きな人の趣味に影響を受けるということは、よくあることだと思うので、そこまで深刻には考えていませんでした。でもある時から、何時に起きて、何時に何を食べたのかということまで、事細かに聞いてくるようになっていったのです。なので、最初は、夜は何時に寝て、朝は何時に起きて…ということを伝えていました。
そんなある日、2人でデートをしていた時のこと。私がお手洗いに行こうとすると、彼は「トイレ? そろそろ行くと思ったよ」と、笑みを浮かべながら言ってきたのですが、ゾッとしました。彼は、私の生活スタイルを模倣しているため、トイレに行きたくなる時間も予想していたようです。なので、「俺もちょっとトイレ行きたくなったから、一緒に行くね」と。その場所は商業施設だったので、男女別の場所に入りましたが、彼は私と同じ行動を取ることが、とても嬉しそうでした。でも、さすがにそこまで合わせようとする彼が怖くなってしまい、その後、別れました。
写真・Eric Lumsden