反動どころか、見違えるような姿になった。
「1回使って、体に張りが出てきました。上積みを十分に感じる」と前川助手はキッパリ。昨年のダービー以来の勝利へ、ウオッカが文句なしの状態に仕上がった。
本当に強い、そして底力のある馬だ。それをはっきり示したのが前走のヴィクトリアマイルだった。馬体重はデビュー以来、最も少ない478kg。威風堂々とのっしのっしと歩くいつものパドックとは違い、完全にしぼんで見えた。過酷だったドバイ遠征の影響は明らかだった。
しかし、レースになるとさすがはダービー馬。エイジアンウインズこそあと一歩、とらえきれなかったものの、鋭い末脚で2着を確保してみせた。
その後は中2週と厳しいローテーションながら慣れ親しんだ栗東でじっくり乗り込まれてきた。寂しかったトモに筋肉が戻り、従来のたくましいウオッカがよみがえりつつある。
「日曜日(1日)には坂路で52秒5(800m)をマークしたように、予定通りにきている」
追い切りをセーブしながら馬体維持に努めなければならなかった前走とはまったく違う。
ダービー、そしてジャパンC4着の実績が示す通り、男馬が相手になっても互角以上の戦いができることは実証されている。さらに前川助手は「ペースが速くなる分、折り合いをつけやすい。だから男馬相手の方が競馬をしやすい」と力を込めた。
何より、大きいのは精神面の成長だという。以前はどうかすると、レースで折り合いを欠いたりモロさも露呈していたが、「海外遠征を経験して馬が一段と成長した。精神面で大人になった」と目を細めた。
経験値の高さはすでに男馬のライバルをはるかにしのぐ。「ダービー馬として恥ずかしくないレースをしたい。また、できる状態にある」
何も不安はない。今度は自信満々で府中に乗り込む。
【最終追いVTR】岩田騎手を背に、坂路で追われ、800m52秒5をマーク。渋った馬場状態だったが、ラストも余裕たっぷりに12秒9を計時した。馬場を考えれば好時計といえるもので動きは軽快そのもの。ドバイからの帰国初戦だった前走時に比べると馬体の張り、動きともに良化。