レッドブル・クリフダイビングは、断崖絶壁から身一つで水面に飛び込む、エクストリームスポーツ。オリンピック競技の10メートル高飛び込みを優に超える最高28メートルの高さから崖下の海や湖に飛び込む。踏み切り、空中での姿勢、着水の3項目で採点され、その合計に技の難易度を掛けたスコアを競い合う。男子は4ラウンド(ダイブ4回)、女子は3ラウンド(同3回)を行い、総合得点の最も高いダイバーがその大会の優勝者となる。1997年の初開催以降、年を追うごとに規模が拡大し、世界各地でファンが広がっている、近年人気急上昇中のエクストリームスポーツだ。
第7戦はボスニア・ヘルツェゴビナの最も有名な観光名所である石橋「スタリ・モスト」を舞台に開催された。エメラルド色に輝くネレトヴァ川に架かるスタリ・モストは16世紀の橋で、川に隔てられた旧市街を結ぶ。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争中の1993年に破壊されるも、川底から拾い上げた石材を使って再建。2005年に世界遺産に登録された。
世界遺産から飛び込みをしてよいのかと心配になるところだが、その歴史は古く、地元土産店の店主は「年に一度の祭りのときは、街の勇気ある若者たちがこの橋から飛び込むんだ。450年続く伝統行事なんだよ」とほほ笑む。しかし、実際に川辺に降りてみるとネレトヴァ川の流れはとても早く、9月だというのに川の水はキンキンに冷え切っていた。
そんな過酷な状況下の中で、大会では女子は橋の頂上24メートルから、男子はさらにその上に設置された飛び込み台からダイブを試みる。特別に記者も男子の飛び込み台にあがらせてもらったが、その高さは異次元。さえぎるものなく広がる美しい絶景と眼下のギャラリーからの視線に恍惚を感じる一方で、止まらぬ足の震えは地面に降りてからも小一時間続いた。
大会初日は、選び抜かれた世界屈指のクリフダイバー男女22名がアーチ橋から次々と果敢に飛び込み、華麗な技を披露。「バンッ」という音を響かせながら着水を決めるたび、詰めかけた数百人のギャラリーが沸き上がった。大会は24日もあり、男女の決勝が行われる。なお、次回の第8戦は10月15日、16日の両日、和歌山県白浜町の三段壁で日本初開催されることになっている。