ここへきて驚かされたのは、かつてお笑い界で、ひねくれ者にして友だちが少ない人見知りキャラクターだったオードリー・若林正恭、バカリズム、南海キャンディーズ・山里亮太が一気にゴールインしたことだ。中でも上半期、最も世間から注目されたのは、山里と女優・蒼井優の“美女と野獣婚”だろう。
6月、完全ノーマークだった2人が初披露となるツーショット会見を開いて結婚を発表。以前は「抱かれたくないランキング」の上位常連だった山里が、ネットや週刊誌によっていい人に「キャラ変」した。会見の司会を担当した後輩芸人のGAG・宮戸洋行まで仕事が増える相乗効果も生まれた。
「そもそも、山ちゃんの男前伝説は芸人の間で有名でした。大阪に行きつけの居酒屋があるんですが、若手芸人が来たらタダで食事ができるようにと、そこにお金をプールしてくれているのです。同じ吉本芸人で吉本新喜劇座長の小籔千豊さんにかつて、“食えない芸人のために貯金をしている”という噂が立ったのですが、本人はそれを否定して、『俺が知ってる芸人でそれをしてんのは山里だけ』と証言したことから、とことん後輩思いであることが見て取れます」(週刊誌の芸能ジャーナリスト)
飲食店に金を置いておくシステムを構築したのは、おそらくビートたけしだろう。たけしは食えない芸人時代に育ててもらった街、東京・浅草で営業しているくじら料理居酒屋「捕鯨船」に、今でも年に一度は訪れる。その際に必ず、「若手芸人たちに飲ませてやってくれ」と大金を大将に預ける。元芸人で、たけしの先輩に当たる大将は“たけし預かり金”と書かれた封筒に入れて、本当にそこから支払っていくという。
元Wコロン・ねづっち、オフィス北野時代の後輩芸人の米粒写経・居島一平、かつての弟子・ガンビーノ小林は、ツケで飲んだという。ナイツ・塙宣之も恩恵に授かった。
「地元の芸人をこよなく愛し、生活の面倒まで見ていたのは、好感度が高い漫才師の博多華丸・大吉。今でこそ全国区タレントとして成功して、司会者としても名を博していますが、九州のローカルタレントだったときは超貧乏。それでも後輩がいればおごり、借金をして、九州芸人のトップにふさわしい振る舞いを怠りませんでした。売れて食えるようになってからは、九州出身の後輩であるバッドボーイズ、パンクブーブーの生活の面倒を見ていた時期もあります」(先の芸能ジャーナリスト)
パンブーが「M-1グランプリ2009」で優勝した際、誰よりも泣いたのは華大だった。
山里、たけし、華大に共通しているのは、売れない時代を支えた町や芸人への還元。CMで見られる“ふるさと還元”は、こんなところにもあった。
(伊藤由華)