「第二次世界大戦、太平洋戦争で戦争に敗れてから、二度と戦争という手段で国際紛争を解決しないというのが日本の国是。その国是を、憲法改正するという手続きを踏むことなく、また、選挙で国民の意思を問うこともせずに一国会で強行採決してしまう。これは、1933年にナチス政権が誕生した際、ヒトラーがワイマール憲法を無視して独裁国家を作り上げた状況に酷似していますよ。いずれにしても、今の集団的自衛権を拡大する、憲法を無視した安保法制案の強行採決は、独立国家のやることではありません」
−−なぜ、強行採決などが許されてしまうのでしょうか。
「それを許している土壌があるからです。つまり、可能としているのは国民ということ。原発反対、消費税反対、TPP反対と言っているが、いざ選挙となると自民党に投票するでしょ。これは、私を含めて日本人全体が生体反応を起こしにくくなってしまった結果なんです。体に五寸釘を打ち込まれているのに、マスコミが『針治療を受けているだけ』と言えばすぐに納得してしまう。しかも、生活の利便さを求めるあまり、欲望を制御することさえできなくなっている。原発も、福島第一原発事故以降コントロールできていないのに、大企業を中心に安い電気を手に入れようと、懲りずに再稼働や原発輸出に奔走する。とにかくすべてがカネ、カネ、カネ、カネ儲けで、健全な心を失っていますよ。安倍政権は、国民全体がそうなって行く中から誕生したわけです」
−−先生と安倍総理の関係は、自民党で同じ派閥にいた時代から長くて深い。安倍総理は、以前からこのような超タカ派だったのでしょうか。
「総理とは兄弟同様の付き合いをしてきたので分かりますが、もともと、とてもじゃないが戦争大好き人間などではなかった。今、安倍政権がこうした道に突入している背景の理由は二つある。一つは“世界の警察”として強大な経済力と軍事力を持っていたアメリカが、急速に力を失いつつあること。ベトナム戦争以降、イラクやアフガニスタン、イラン、ウクライナなど、すべてが思うように上手くいかない。それに反し中国は、AIIB(アジアインフラ投資銀行)で、その存在感をアピールし、欧州各国もそこへ走ってしまう。アメリカが制止しても、もはや誰も貸す耳を持たない状況ですからね」