イタリアのフィアットとマツダは昨年5月に事業提携を結んでおり、今回のOEM供給が第1弾。これをステップに、両社は提携拡大を検討中のようだ。
「フィアットは2年前に米ビッグ3の一角だったクライスラーを子会社化したように、以前からM&Aには積極的。マツダに擦り寄ったのも、その中核技術をかすめ取り、欧州で最大のライバルとにらんだフォルクスワーゲン(VW)の背中を捉えるためには小型車での底上げが不可欠と判断したからでしょう」(業界筋)
野心家として知られるフィアットのセルジオ・マルキオンネCEOは、'14年までの目標として「世界販売600万台」を掲げたが、欧州の経済危機を受け、昨年暮に480万台への下方修正を余儀なくされている。
「しかし、VW追撃を諦めるマルキオンネCEOじゃありません。その秘策として囁かれているのは、トヨタが誇るハイブリット技術の転用です。マツダは今年中にトヨタからハイブリッドシステムの技術提供を受けた新車を発売する。そのトップ技術が既にツバをつけたマツダ経由で取得できれば、これは強力な武器になります」(マツダ関係者)
確かに、TOBなどでの乗っ取り策では莫大な金がかかるのに対し、警戒心の薄いOEM供給ならばタダでその技術に触れられる。
「むしろ中途半端な形で提携したトヨタの御曹司社長は『こんなはずでは…』とほぞを噛んでいるに違いありません」(前出・業界筋)
日本の技術が海外に流出するのは、もはや珍しいことではないが…。