しかし、この男の上を行く横領が過去に存在した。新潟県の大手製紙会社の子会社に勤務していた男だ(逮捕当時60)。勤勉で真面目と評判な人間だったが、15年間で約24億7600万円を横領していた「札付きの悪」である。
男は会社名義の小切手を振り出し、銀行で現金化する手口を繰り返していた。大手製紙会社の子会社であることから、社長も非常勤だったうえ、副社長も事業を把握しておらず、容疑者は簡単に金を懐に入れられる状況だった。総務・経理の責任者として君臨していた男は、隠蔽工作も抜かりなく行っており、2000年から2015年まで、湯水のように金を使っていた。
では、金を何に使っていたのか。それは欲望を満たすことである。30代の愛人を複数人持ち、マンションや車を与えていたうえ、株や競馬などにも使用。さらに毎日のタクシー移動、10数万円の食事等々。
15年間の横領は、1日会社を休んだことで発覚。銀行からの問い合わせが別の社員に入ったことで、不正が暴かれ解雇された。男は「愛人にたかられていた」という情報もあるが、放蕩生活を送っていたことは間違いない。
2016年12月、男は東京地裁から懲役7年の実刑判決を受ける。「やりたい放題」の生活に罰が下ったが、15年もの放蕩生活の代償にしてはかなり軽いという声が各方面から上がることになった。そして、15年の横領を許した会社についても、その体制を疑問視する声も飛び、信用を落とすとともに、その悪名が末代まで語られることになった。
他人の金で「飲む・打つ・買う」ことは非常に気分が良く、王様にでもなったつもりになるのだろうが、いつか必ず発覚し、逮捕されるのだ。
文 櫻井哲夫