同アニメは、子供向けの教養番組『ビットワールド』のアニメコーナーで、2016年4月8日から放送されている5分程度の短編アニメ。テレビ放送に加えてネット配信もしており、どんな時間帯でも楽しむことができる。基本的に一話完結型ストーリーなので、どの回から見ても楽しめるのも魅力だ。
このアニメは、主人公・松田名作が“名作物語のキャラクターを目指す”というシュールな学園コメディ。個性豊かな同級生のボケに、名作が漫才形式でツッコミを入れていく、分かりやすくもレベルの高い笑いのスタイルをとっている。子供はキャラクター同士がかわすかわいらしくてバカバカしいやり取りを面白がり、大人は集団コントを見るような感覚で楽しんでいるようだ。
それもそのはずで、主要キャラクター4名の声優は、松竹芸能所属の芸人コンビが埋めている。主役・名作を那須晃行(なすなかにし)が、桃の被り物をした御尻川スウィーツを中西茂樹(同)が演じる。おむすびの姿をした団栗林むすびを金子学(うしろシティ)、赤い三角帽子に段ボールの服を着たピノキオ風なロボット少年ウインドウズノキオを阿諏訪泰義(同)が好演している。
なすなかにしは、大阪出身らしくテンポの良いしゃべくり漫才が特徴。張りのある声と掛け合いはそのままアニメにも活かされている。また、ひょうひょうとした出で立ちと、シュールなコントが特徴のうしろシティの個性もしっかりと反映されており、まるで当て書きをしたかのような4人のやり取りが楽しめる。
名作が竜宮小学校に転校してくる第一話では、名作とむすびの掛け合いが楽しい。名作がむすびの姿を見て「キミは…おにぎりくん?」と尋ねると、「おむすびです」と言い返される。名作が「同じじゃん」とつぶやき、「おにぎりって言ったらアレですよ、米粒を鼻に詰めますよ」「体中の穴という穴に米粒をみっちり詰めますよ!」とむすびに畳み掛けられるシーンは必見だ。
クセの強いメインキャラクターはもう一人。映画『ハリー・ポッターシリーズ』の日本語版・ハリー・ポッター役を長らく演じた、声優で俳優・歌手の小野賢章だ。リーゼント頭に二足歩行の亀役・F・ボルト役として、4人に負けず劣らずの個性を発揮している。
その他、ラッパーのDOTAMAやタレントの木下優樹菜、フリーザやバイキンマンの声優などで知られる中尾隆聖、女声ボーカロイドのキャラクター・初音ミクが本人役で登場するなど、豪華で幅広いジャンルの出演者が顔を揃えているのも見どころだ。
制作は、東海テレビのアニメ『かよえ!チュー学』のスタッフ陣が手掛けている。原作・アニメーションはPie in the sky。主にキャラクターデザインを担う作家集団であり企画・制作会社だ。この他にもテレビアニメ『ぐらP&ろで夫』(BSフジ・TOKYO MX)や『からくり侍 セッシャー1』(テレビ静岡)など、作品自体を見ていなくても、特徴的な絵でアニメを認識している人は少なくないだろう。
監督は、「第8回文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門」の奨励賞をはじめ多くの賞を受賞している新海岳人氏。「映像作家100人」にも選出されている優れたクリエーターだ。
親世代の視聴者は、子供と一緒にEテレを見ていたらハマったというケースが多いようだ。また、何気なく動画サイトのYouTubeやU-NEXTを見て興味が湧いたという視聴者や、『かよえ!チュー学』の頃からのファンが続けて見ているというケースも。また、声優として出演するお笑い芸人やタレントをきっかけにして知った人もいるようで、あらゆる方面から徐々にファンを獲得していったと考えられる。
ネット上の声を見ると、「名作みたいなツッコミスキルがほしい」「全話、子供とゲラゲラ笑って見ています」「校歌の歌詞がめっさカヲス過ぎて、ワロタ」「学費が毛ガニより安いってあり得んだろ」「かよちゅー見てるようで懐かし」「悪の校長=バイキンマンの声!」「竜宮小学校って7年生まであるの⁉」と、ツッコミどころを楽しむコメントが満載だ。
同アニメは、昨年度に『さいておいしいモッツァレラ』(明治)で初のコラボレーションCMを実現。その後は、『オロナミンC』(大塚製薬)や『ロボット教室』(ヒューマンアカデミー)のTVCMでもキャラクターが起用されており、ジワジワと知名度を上げている。今後もファンが増え続けるであろうアニメとして注目していきたい。