「私の周囲の地方学会中堅幹部らの間でも、本音では今回の安保関連法案には反対と言っています。また、法案を巡って学会上層部では内部分裂しているという話も漏れ伝わってくる。ただ今は、公明党が与党であることを重視する空気も強く、学会にすれば何もせず時が過ぎるのを待つのが得策とみる空気もある」
では今後、参院で審議中の安保法案は、公明党内でどう判断されるのか。公明党関係者が解説する。
「共同通信の世論調査では、創価学会信者、公明支持者の実に94%の人たちが安保法案に納得していない。学会上層部は、三色旗を掲げて安保反対デモに参加しても、反対署名をしても公にはストップをかけない。これはガス抜きで、自民と喧嘩したり与党離脱をする気はないということだ」
というのも、来年には参院選を控えている。公明党、創価学会にしても、最低、現状の9議席プラスαがベスト。そのためには、地方選挙も国政選挙も自民党の協力が欠かせないからだ。
問題は、世論がどう動くかだという。「今後は二つのシミュレーションが考えられる」と、創価学会に詳しいジャーナリストは言う。
「一つは、ますます安保法制反対論が強くなり、安倍政権の支持率が30%を切った場合、公明は方針変更し、参院での安保法案採決に賛成しない。参院で60日以内に可決しなければ衆院に法案が戻され3分2以上の賛成で可決されるが、衆院で公明が協力しなければ、自民だけでは3分2に満たず、安保法案は成立しなくなる」
もう一つは、学会も公明も真っ二つになってしまう可能性だ。
「ポイントは公明党自体の支持率。共同通信の7月の世論調査で、一貫して『安保法案絶対反対』の共産党が4.8%から7.3%と2.5%も伸ばし、一方の公明党は3.6%から2.9%と1%近い落ち込み。来年の参院選からは18歳投票も解禁だが、若い人は安保法案に批判的。参院選までこの空気が続けば、公明は大敗の可能性もある。そのため、安保法案に批判の声が強くなれば、学会内部の賛否も激烈化し、学会員の支持が得られないことで、公明党内部では大量離党者が出る可能性も否定できません」
前出の二見氏もこう言う。
「来年は、場合によっては衆院とのダブル選挙の可能性も囁かれている。公明党、学会幹部らは、今回の反安保法案の学会員の怒りのハンドリングを誤ると大混乱に陥る可能性があります」
一方、公明党や学会が安保法案にシビアになり、不成立や分裂となれば、安倍政権も風前の灯。凪と見られていた9月の総裁選でも、突然、反安倍候補が躍り出す可能性すらあるのだ。