キャバクラ嬢に恋心を抱いたり、そこまでいかなくても、あわよくば恋愛しちゃいたい、なんて思っているお客さんは多いものです。現に、私の知人でも、キャバクラ嬢と付き合った人は何人もいます。だから、「人並みに恋をする」のは、稀なケースでもない。
といっても、私のように、キャバクラ嬢と付き合ったことがない客からすれば、「そんなの稀だよな」って思うのです。その一方、客と付き合ったことのあるキャバクラ嬢からすれば、「稀」どころか、「普通」のことかもしれません。
「客と付き合うって、本当にあるのかな?」と思っている、疑り深い私のような客にとっては、「客なんて、財布のようなもの」とか、「客とのメールは営業としか思ってない」みたいな、“現実”的なことを言われると、なぜか納得してしまうものです。
先日も、T嬢(20)から、
「てっちゃんだから言うけど、毎日、営業どうしようと思ってるから、お客さんをどう呼ぼうか、とかしか考えられない。だから、メールをするときも、担当と一緒に考えてるんだよ」
と言われたのでした。それはそうです。一人のキャバクラ嬢からみれば、大半の客は「営業的な付き合い」でしかない。仮に一人と本気で恋に落ちたとしても、その他大勢は、ただの客でしかない。もちろん、客だって、そう思っている場合が多いのかもしれないけど。
ただ、こんなことを言うと、「てっちゃんが、本気で好きになったことがないからじゃないの?」って反論がありそうです。たしかに、キャバクラ嬢を本気で好きになり、それなりのアプローチをしたことがあるのか?と問われれば、「ない」としかいいようがない。
でも、冒頭の、「キャバクラ嬢だって.......、恋することだってある」というところは本音。ただ、お客さんに口説かれることもあるが、それが、本気で言っているのか、冗談なのか、気にしているところがあります。R嬢(21)は、「口説かれたけど、ただやりたいだけみたいだった」と言っていたことがありました。そうすると、「人としての価値」に自信をなくしてしまうものです。
女として見られるのはうれしい。しかし、ただ性の対象としか見られないのは悲しい。自信があるキャバクラ嬢だって、それを繰り返されれば、徐々に自信をなくし、時には病んでしまう。それだけ、「性の対象」として晒されているのがキャバクラ嬢なのです。
<プロフィール>
渋井哲也(しぶい てつや)フリーライター。ノンフィクション作家。栃木県生まれ。若者の生きづらさ(自殺、自傷、依存など)をテーマに取材するほか、ケータイ・ネット利用、教育、サブカルチャー、性、風俗、キャバクラなどに関心を持つ。近刊に「実録・闇サイト事件簿」(幻冬舎新書)や「解決!学校クレーム “理不尽”保護者の実態と対応実践」(河出書房新社)。他に、「明日、自殺しませんか 男女7人ネット心中」(幻冬舎文庫)、「ウェブ恋愛」(ちくま新書)、「学校裏サイト」(晋遊舎新書)など。
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