「石油タンクが炎上すれば東京湾は火の海になる。さらにその津波は西日本を襲う。慶長地震では、徳島で20メートルの津波が来たとの記録もあります。また、伊豆・小笠原海溝で発生した地震が、首都圏直下地震や東海地震を誘発しないとも限らないのです」(前出・サイエンスライター)
地震動も侮れない。5月30日の地震は発生当初、気象庁がM8.5と発表、その後、M8.1に下方修正されたが、いずれにせよ東日本大震災以降で最大規模だったことは間違いない。
「当日は土曜日だったため、観光やレジャー帰りの人たちなどが鉄道ダイヤの乱れに巻き込まれた。首都圏では地震発生直後、ビルやマンションのエレベーター約6000台が揺れを感知し自動停止している。これが平日の帰宅時間であれば、大混乱を招いたでしょう。帰宅難民も出た3・11を経験していても、やはり首都圏は地震に弱い。しかも、木村氏の指摘する巨大津波が襲えば、大パニックを引き起こすことになります」(同)
さらに、伊豆・小笠原諸島での地震が首都直下地震や東海地震を誘発したらどうなるか。首都圏壊滅、さらに1974年に作家・小松左京氏が著した『日本沈没』の現実味さえ帯びてくるのだ。
『日本沈没』は、地球物理学者が地震の観測データから日本列島の異変に気付き、潜水艇で小笠原諸島沖の日本海溝を調査。すると、海底を走る奇妙な亀裂と泥流を発見し、データ解析の結果、「日本列島は最悪の場合、2年以内に地殻変動で陸地のほとんどが海面下に沈没する」という結論に達するものだった。
「東日本大震災の翌年、『M7級の首都直下型地震が4年以内に70%の確率で起きる』と、東大地震研究所の教授が発表し世間を騒然とせたが、それにしても最近は国も首都直下地震に関して完全にトーンダウンしてしまった。明らかに東京五輪を意識しています。地震予測が社会情勢に左右されるのはおかしな話ですよ」(ある地震研究者)
再び『日本沈没』に話を戻せば、列島は相次ぎ巨大地震や大噴火に襲われ、四国から海中に沈み、最後は北関東が大爆発を起こし完全に水没する。その間、調査に半信半疑だった政府は、最終的に日本人を海外に脱出させる方法をとる。
列島沈没とはいかないまでも、首都圏壊滅への確かな調査結果が出た時−−国にそんな果断など期待できそうもない。