「日本球界を代表するスラッガーであり、DeNA打線を最少失点に抑えることができるか否かは、筒香との勝負に掛かっています。いつも通り、筒香対策には時間を費やしましたが、この3連戦に関しては、相手のほうが上だったということ」(巨人関係者)
同関係者によれば、DeNAとの試合前、バッテリーミーティングは少し長くなるという。筒香対策に時間を要するためで、この3連戦も綿密な打ち合わせをしていたそうだ。しかし、巨人側が立てていた作戦は試合直前になって見直さなければならなくなった。
3連戦初戦の18日のことだった。筒香が打撃フォームをいきなりマイナーチェンジさせたのだ。ビジターチーム・DeNAの試合前練習は午後3時過ぎに始まる。ビジター、ホームの順で行われるのが球界の慣例だが、筒香の打撃練習を「最終チェック」として見ていた巨人スタッフがそれ気づき、大至急でスコアラー陣に報告したのだという。
「右足を開くオープンスタンスに代えていました。シーズン途中で打撃フォームを代えるなんて…」(前出・同)
この打撃フォームの改造だが、筒香自身が決めたことのようだ。前日までの筒香は不調だった。5月の打撃成績は前日17日時点で、2割4厘、本塁打ゼロ。相手ピッチャーの投じたボールをスイングさせる直前まで見極めるため、オープンスタンスに”マイナーチェンジ”したのだという。DeNA関係者によれば、筒香はラミレス監督にも直接、打撃フォーム改造の意図を説明し、許可をもらっていたそうだ。
その18日、巨人の先発はエース・菅野智之(28)だった。最初の対決は”様子見”だったのだろう。四球で歩かせている。だが、2打席目、オープンスタンスの弱点とされる外角球を投じたが、筒香はフルスイングで引っ張らず、レフト方向に流してスタンド・イン。この菅野の眉間に皺を寄せた表情が、その後の巨人投手陣の完敗を物語っていた。
「16年、巨人投手陣と筒香の対戦成績は打率3割1分9厘、本塁打7、打点18。でも、昨季は打率2割4分7厘、本塁打2、打点10まで落としました」(前出・巨人関係者)
筒香も巨人バッテリーが研究していることは分かっていた。その配球を攻略するための打撃フォームのマイナーチェンジだったのかもしれない。
「昨年のクライマックスシリーズでも筒香は打撃フォームをマイナーチェンジさせました。打てない、マズイと思ったら、できることは全てやっておくというのが筒香です」(プロ野球解説者)
一般論として、プロ野球選手が打撃フォームを改造するのはシーズンオフ。シーズン途中での改造は「不慣れ」「準備不足」のリスクも負うため、ほとんどやらない。
3連戦最後の20日、筒香は自身初、DeNAでは04年の多村以来となる「1試合3本塁打」をマークした。敗れた高橋由伸監督(43)は「(筒香に)そんなに打たれているわけではない。切り換えてまた…」と言っていたそうだ。おそらく、4番の仕事をさせなかった昨季のイメージがまだ残っていて、「そんなに打たれていない」と口にしたのだろう。
巨人は2位をキープしているが、広島、DeNAに大きく負け越している。対広島は1勝4敗、DeNAとは3勝7敗1分。早々に「苦手チーム」を作ってしまったようだが、筒香対策をやり直さなければ、首位広島の追撃はおろか、0・5差と肉薄する3位DeNAに足元をすくわれてしまうだろう。(スポーツライター・飯山満)