勿論、この「言霊」とよく似た考え方は欧米などの他国にもある。呪文や詔、ある種の音や楽曲には魔を払う力があるとされた物で、例えば中国の春節(旧正月を祝う祭り)の時にならされる爆竹などはその一例である。
しかし、この「言葉の力」が昔から信奉され、身近に感じられる国は日本が一番なのではないだろうか。もともと日本は言魂の力によって幸せがもたらされる国、「言霊の幸はふ国」とされていた。また、誰もが小さい時にお年寄りや学校の先生に教わった記憶があるだろう。「人の悪口を言ってはいけません。意地悪したら、自分に返ってくるよ」と。公共広告機構ACジャパンのCMでも有名になった、金子みすゞの詩「こだまでしょうか」にもあるが、こういった「言った言葉が跳ね返ってくる」という考え方は「言霊」が根底にないと出てこないものである。
最近では、若者言葉などを筆頭に誰もが発する言葉が概ね乱暴になってきているし、所詮は何の気無しに発している物だから、と昔ほど「言霊」は顧みられていないように見える。
ところが、この「言霊」はどうも近年になって進化してきたのでは、と思わせるような事例が多くある。近年の「言霊」は主にインターネットを舞台に猛威を振るっているようで、代表的な例がブログや掲示板での書き込みだ。天災や大きな事件・事故の起きる前に、それを予測したような言葉が書き込まれていたり、時には乱暴な呪いめいた書き込みが時を経て現実化したかのように思える事例も多くある。
ただの偶然、で片付けるには少々確率が高すぎる「書き込み」の「言霊」。「こだまでしょうか」のCMではないが、改めて自分の発言に注意すべき時代が来ているのかもしれない。